第3話 初クエスト


 目の前にある契約書を受付嬢に渡すと、満面の笑みで言われる。


「ダイラルさんはこれからどのクエストを受けるのですか?」

「え~と......」


 流石に、受けるクエストまで決めていたわけでもないため、口籠ってしまった。すると、受付嬢が一枚の紙をテーブルの上に置いた。


「これとかいかがですか?」


・ダンジョン調査(Dランク)


(何だこれは?)


 ダンジョン調査だけ書かれている依頼書を見せられても、どのような内容なのかがさっぱり分からない。


「これは、隣にあるアキナ村の付近にあるダンジョンの調査になっております」

「え~と。場所は分かりましたけど、なんでダンジョン調査がDランクなんですか?」


 普通のダンジョン調査なら、EランクやFランクでもやることはできる。だけど、Dランクということは、それなりの理由があるはずだ。


 俺がそう考えながら首を傾げていると、受付嬢が話し始めた。


「普通のダンジョンにはなっているのですが、アキナ村にいろいろと被害を出しているという情報が入っていて、Dランクになっています」

「簡単に言えば、普通のモンスターより知性が高い奴がいるということですか?」


 そう。今の話を聞く限り、アキナ村に被害を出しているが、未だに原因すら掴むことが出来ていない。

 

 それはつまり、低級モンスターではなく、知性があるモンスターが生息している可能性が高いということ。


「はい」


(やっぱり......)


「具体的にどのようなモンスターが出てくるのかも分かりません。そのため、Dランクになっております」

「わかりました。受けます」

 

 俺がそう答えると、受付嬢は驚いた表情をしていた。


「ほ、本当に受けていただけるのですか?」

「はい。なんでそんなに驚くのですか?」

「はっきり言って、Dランククエストの中では、報酬が低い部類でしたので」


(そ、そうだったの!?)


 Dランククエストの報酬がどれぐらいもらえるかなんて知らないから、受付嬢の言葉に驚きを隠しきれなかった。


(まあ、受けるけどさ)


 俺は、人のためにこの力を使いたいと思っている。なら、このクエストは受けるべきクエストだと思う。


「そうなのですね。でも、受けますよ」


 俺の言葉に、受付嬢は頭を下げて言った。


「ありがとうございます‼」

「いえいえ」

「では、クエストの認証をしますね」

「ありがとうございます」


 その後、すぐさま冒険者ギルドを出て、道具屋でポーションなどの必需品を購入してアキナ村へと向かった。



 この国---ライベルトで馬車に乗って数時間程でアキナ村へとたどり着いた。


「ここが、アキナ村か......」


 俺がそうボソッと呟くと、目の前に銀の胸当てをしている銀髪の女性が立っていた。すると、驚いた表情をしながらこちらに近寄ってくる。


「え、なんで......」


(なんでって、クエストを受けに来たんだけど......)


 俺は、すぐさま頭を下げて自己紹介をする。


「初めまして。ダイラル・エルボと申します」


 俺の言葉に、女性は少し悲しそうな表情をしていた。


(俺、何か悪いことしたか?)


 あ、そう言うことか。報酬が減ってしまうことを考えているのか。


(申し訳ない事したな)


 俺がそう思っていると、目の前の女性が頭を下げて言った。


「セナ・ミルカと申します」

「あなたも、クエストを受けたのですか?」


 俺の問いに対して、セナさんが頷く。


「ダイラルさんもですか?」

「はい。セナさんは冒険者のランクで言うとどれぐらいですか?」

「わ、私はEランクです......」

「え!? Eランクでも受けられるのですか?」


 DランククエストにEランクの冒険者が受けられることに驚きを隠しきれなかった。


「自身のランクの上下一つは受けられますので」

「そうなのですね。すみません。初めて冒険者になったものなので何もわかっていなくて......」

「謝らないください」

「そう言っていただけると助かります」


 その後、二人とも無言の状態が続く。


「え、えっと。ダンジョンの場所とか分かりますか?」

「はい。ここから一キロ程離れた場所にあります」

「セナさんはダンジョンに入られましたか?」


 その問いに、セナさんは首を横に振った。


「では、明日一緒に行きませんか?」

「い、いいのですか?」

「はい。逆に是非一緒に行ってください」

「わかりました‼」


 そして、俺はセナさんにアキナ村の案内をしてもらって、翌朝を迎えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る