第4話 ダンジョン調査


 アキナ村を出て、ダンジョンに向かう途中に話しかけられた。


「ダイラルさんは勇者パーティを辞められたのですよね?」


 俺はその言葉に驚きを隠しきれなかった。


(なんで、それを......)


 だけど、少し考えれば分かること。勇者パーティから追放されたなんて情報が、出回らないわけがない。

 

 俺は苦笑いをしながら答えた。


「はい。追放されたんですよ。聞いていませんか?」


 その言葉に、セナさんは驚いた表情をしていた。


(え?)


 噂として知っていたわけじゃないのか。俺がそう思っていると、セナさんが言った。


「いえ、私は元々ダイラルさんが勇者パーティにいたことを知っていました。なので、一人でクエストを受けているってことは辞められたのかなって思いまして」

「あ~」


 流石に俺も勇者パーティの一員として名前が売れていたのは自負している。だから、俺が一人で行動していること自体がおかしいと思っていたのか。


「あはは。やめたわけじゃなくて、実力不足で追放されただけですよ」

「え、ダイラルさんがですか?」

「あ、はい」


 セナさんは何か考えたのち、話し始める。


「私が言うのもどうかと思いますが、ダイラルさんの実力は素晴らしいと思いますよ」


 その言葉に、俺は顔をしかめてしまった。

 

 なんせ、セナさんの言葉に少しイラっとしてしまったのだから。セナさんは、俺を慰めるために言ってくれているのはわかっている。


 だけど、そんな簡単に言わないでほしいと思ってしまった。


 セナさんに何が分かるんだ。今まで一緒に冒険をしてきた仲間に無能だと言われて追放される。


 それは、誰よりも俺の事を知っている奴に無能と言っているようなもの。


「あ、ありがとうございます......」


 だけど、そんなことは言えず、力を振り絞ってお礼を言った。


 すると、セナさんは俺に頭を下げて謝ってきた。


「ごめんなさい」

「え?」

「ダイラルさんの表情を見ていれば分かります。赤の他人にこんなことを言われても同情としか思っていないと」

「......」


 俺は何も言えなかった。なんせ、実際にそう思っていたのだから。


「でも、どうしても自分を否定してしまいそうになった時、あなたを信用している人が一人はいると思い出してください」

「な、なんでそこまで」


 セナさんの表情を見ているだけで、分かる。この人がお世辞で言っているわけではないと。だけど、まだ会って間もない奴になんでこんなことが言えるのか疑問であった。


「それは......」


 そう言った瞬間、目の前にダンジョンの入り口が見えた。


(今のまま話していたら、確実に雰囲気が悪い状況でダンジョンに入ることになる。それだけは避けたい)


 俺はそう思ったため、セナさんに言う。


「この話は、また後日話しましょう。今は目の前にことに集中しましょう」

「そうですね」


 そして、俺とセナさんはダンジョンの中に入って行った。


 ダンジョンの中は、薄暗い洞窟のようであった。


(ここに、原因があるんだよな)


 一瞬、セナさんの方を見ると、少しこわばっている表情をしていた。


(俺が何とかしなくちゃ)


 そう思いながら、セナさんと俺は警戒しながらダンジョンの奥地へと進んでいった。


 歩き始めて三十分ほど経ったところで、ゴブリンが数体現れる。


 俺はすぐさま、剣を抜いて戦闘態勢に入る。それと同時にセナさんも杖を出した。


「俺がゴブリンに仕掛けます。セナさんは援護をお願いします」

「はい」


 俺は目の前にいるゴブリンに向かって攻撃をすると、一瞬にして真っ二つになった。


(え?)


 ゴブリンがあっさりと斬り倒せたことに驚きが隠せなかった。なんせ、今まで戦ってきたゴブリンがこんな簡単に倒せたわけじゃないから。


 そう考えていると、目の前にいるゴブリン二体がこちらに攻撃を仕掛けてくる。


 俺は、まず左にいるゴブリンを斬り倒すと、右にいるゴブリンが頭を狙って殴りかかってくる。


 それを、セナさんが風切エア・カッターで援護してくれた。


(終わったのか)


 俺はすぐさま、セナさんの方へと向かう。


「ありがとうございます」

「いえ。流石です」


 そこで、ふと先程戦ったゴブリンのことを思い出す。


「さっきのゴブリン、弱っていましたか?」

「ダイラルさんもそう思いましたか?」

「はい」


 俺は、死体の方向へ向かって行くと、ゴブリンは痩せこけていた。


(どう言うことだ?)


 なんで、こんなに痩せているんだ。


 俺が首を傾げながら考えていると、セナさんが言う。


「この奥に何かありそうですね」

「そうですね」


 そして、俺とセナさんが先へ進もうとした時、ダンジョンの奥地からモンスターの叫び声が聞こえた。


「ウゴォォォォ」


 セナさんと視線を合わせた後、すぐさまダンジョンの奥地へと向かって行った。


小説家になろうでも投稿しています。




 

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