第33話:再会


「え!? サイディオスで活動してる冒険者ってこんな少ないんですか!? 一応外の人間にも開かれるようになったんですよね?」


 サイディオスにも冒険者ギルドは設立されているとのことで、俺達はマイティス王子の案内でドーム型の冒険者ギルドにやってきた。そこで個人依頼リストを受付に見せてもらったところ、サイディオスに冒険者が殆どいないことが分かった。


「あれ? ゲームではサイディオスにめっちゃ冒険者いるって聞いたけど……あぁ、そうか……ゲームと違って結界があるから……選別を突破しつつここを拠点にしたい冒険者ってなるとあんまり数がいないのか」


「ああシャヒルさん、それについてだがサイディオスの冒険者ギルドは支部を設立することになったんだよ。サイディオスとラシア帝国の中間地点に位置するヨルド国、そこにギルドの支部を作る。サイディオスは結界によって善良な人々以外との接触を断っているけど、そういった人々でも間接的になら、単純なビジネスとしての関係なら問題ないだろうって話になってな。エージー様の提案でやることになったのさ」


「そうか選別漏れした人はヨルド国が拠点ってことになるのか、あそこもこっちの方のダンジョンに近いしなぁ。それにしても、さっきからマイティス王子が言ってるエージー様って人はこの国での影響力が強いんですね。どういう立場なんですか?」


 高レベルの協力してくれる冒険者を探す当ては外れたけど、サイディオス自体は重要な国っぽいんだよな。ほぼ鎖国してたけど、一応人界に出てきていたエルフ族の国家で、人界と関わらない他のエルフ族の国家とも関係が深いって設定だったはず。


 エルフ族は人間の非プレイヤーと違って、基本的にレベルが高い。彼らが俺達に協力してくれるかは分からないけど、もしも力を借りることができたなら、世界の滅亡を抑止する大きな助けになると思う。人嫌いのエルフも人でなく世界のためならば戦ってくれるかもしれない。


「ああ、エージー様はサイディオス王家の新しい分家、ベイアディオス家の当主という立場だ。ワシの妹の姫、サリアと婚姻を結んだからだ。まぁ、婚姻と言っても……本当にこれでよかったのかという疑問はあるが……」


「その、何があったか聞いたらマズイ感じですか?」


 俺が興味本位でマイティス王子に質問した時のことだった。


「ん? なんだ? オレの話してんの? あ! もしかしてこの人達がさっき聞いた外から来た人か!?」


 懐かしい声色が俺の耳を通り抜けていった。声のする方に振り向くと、そこには面影があった。


「さ、佐熊……?」


「サクマ? 誰だそいつ?」


 俺のリアルでの親友、佐熊衛二さくま えいじと瓜二つのエルフがそこにいた。


「ど、どういうことだ? でも佐熊と名前が同じで、顔も似てて……無関係ってそんなことありえるのか? ま、マイティスさん!? 何があったんですか!? 俺、話を聞かなくちゃいけない。こいつは俺の知り合いと関係があるかもしれないんだ!」


「そんな、まさか……シャヒルさんは……エージー様の知り合いだったというのか? これもまた、運命だというのか? ……彼の名はベアギャップ・エージー、今はエルフだが、元は人間だった男、サイディオス王家の呪いによって、存在を歪められてしまった存在なのです」


「元……人間……呪いで存在を歪められたってそんな……じゃあ……もしかしてベアギャップってギャップベアーってこと? 衛二だからエージーで……安直すぎるだろ……俺も人のこと言えないけど……」


「なっ!? え!? なんでオレ呆れられてんの!? というか待って、お前オレの知り合いなの? もしかして友達!?」


 妙に高いテンションも、身振り手振り、話し方も、何もかも……


 俺の親友である佐熊とこいつは同じだった。


 そしてどういうわけか、佐熊は俺のことを……いやおそらく俺だけじゃない、過去の記憶を、リアルでの記憶を失っている。まだ本人であると確定したわけじゃないけど……


 知らなかったよ。佐熊がロブレをやってたなんて……だって、だって佐熊、俺がロブレをやろうって誘っても一緒にやることなかったじゃん。ゲーム自体それほど興味を持っていなかった佐熊が……俺よりもゲームの進行度を進めていた。


 それで、ロブレを始めても俺に接触することもなかった? それとも俺と同時期に始めてたけど出会わなかった? 何にしたって色々と変だ。だって佐熊は、俺がロブレをやってたことは知ってたし……


「シャヒルさん、少し場所を移しましょう。ワシの屋敷で彼のことを話しますから」


 今日はマイティス王子に色々と案内されてばかりだな。でも、こうも頭の中がグチャグチャに整理がつかない状態だと、リードしてくれる存在はありがたいな。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る