第42話 雨降って
「すいませんでしたぁ~っ!」
初手、土下座。
珀さん不在でも、妙に板についてしまった格好である。デジャブだね。
五十嵐さんの大事なものを破壊した手前、とりあえず土下座をキメる。
いつの間にか、HUKAN先生が消えていた。ウィルスにデリートされたかな?
おそらく、どこぞの巨大サーバーやクラウドにバックアップ済みだと思うけどね。
「勝負に犠牲は付き物だ。貴様を非難するつもりはないぞ」
と言いつつ、五十嵐さんはそっぽを向いた。めっちゃ根に持ってるじゃない。
「まあ、木刀など所詮棒切れ。ちょうど、買い替え時だったな」
「え、あの木刀に思い入れがあるんじゃないの!?」
「アレは三代目だ。初代はとっくの昔にお陀仏しているぞ」
「な、ナンダッテー!?」
衝撃の事実だった。
ゴールデンレトリバーを必死に追いかけたあの苦労は一体……
「久能明爽が随分と熱心で、言い辛くてな。さりとて、三代目を軽んじていたわけにあらず。毎日手入れを欠かさなかった相棒ゆえ、諦めるには惜しい存在には変わらんぞ」
「そうですか」
疲労感が急にがどっと押し寄せる。頭痛、眩暈、腰痛、腹痛、擦過傷、その他もろもろ。
あぁ、税金かけ流し温泉に浸かりたいなあ。じゃぶーん。
「さて、約束通り、私が現在の性格を形成した由来を語るわけだが」
離れ小島唯一の木に寄りかかった、五十嵐さん。コホンと咳払い一つ。
「本当に聞きたいのか? 特段、オチなどない昔話だぞ?」
「聞かないと、いろいろ話が進まないからね。過去語り、どうぞ」
「……笑わないか?」
「はよ」
まるで乙女みたいにモジモジし始めた五十嵐さんに、僕は催促する。
パートナーは観念したらしく、ゆっくりと口を開いた。
「――私は小学生の頃、よく男子共と外で遊ぶ活発な少女だった。ままごとより鬼ごっこ、人形遊びよりドッチボール、花集めよりドングリ集めが好きだった」
無邪気にはしゃぐ五十嵐さん(悟り(と書いて小五ロリ))を連想した。可愛いね。
「お菓子作りやピアノの習い事をやらされたこともある。三カ月も続かなかったのだがな」
五十嵐さんが目をつむっている。在りし日に思いを馳せているのかな?
「アニメを見れば、プリンセスよりヒーローの活躍に注目し、魔法少女のステッキよりDXナントカというオモチャの剣の方が欲しかった」
ホビーショップのガラスケース越し、声が出る変身ベルトは垂涎の的だったね。
僕も欲しかったけれど、お年玉はゲームで全部使っちゃったなあ。
「放課後、一緒に遊ぶのはほとんど男子。そんな青春に転機が訪れたのは、ちょうど小学校高学年に上がる境目だった」
「事件が起こりそうだね」
「記憶が定かではないが、確か、恋愛バラエティーやドラマが流行っていた頃でな。次の日、その番組で話題は持ちきりだったぞ。番組を視聴してない奴に発言権はないほどに」
「あー、あったっ! めちゃめちゃラブしてるッ! アモーレの泉。踊る大恋愛捜査線。僕もまんまと見てたよ」
個人的に、今ほどコンプライアンスが騒がれなかった時代のテレビ番組の方が好き。やり過ぎた演出もあったかもしれないが、面白くなきゃテレビじゃないじゃあ~んである。
「うむ。コンカツPRの番組や校内でのコンカツ講習が重なった結果、我が母校では空前の告白ブームが到来したのだ。高学年にもなって、付き合ったことないのは恥ずかしい。ダサい奴という烙印を押されてはマズいと、皆は焦燥感に駆られていたらしい」
「きっと五十嵐さんは、我関せず、だったでしょ?」
「無論だ」
鮮明なイメージ映像を脳裏で再生できます。
「否、放課後の契りを交わした我が旧友たちは遥か遠き過去の産物へ」
薄い笑みを漏らした、五十嵐さん。
「私を前にした途端、よそよそしい態度を取るようになりおって。揃いも揃っておかしいと詰め寄れば、目を逸らされるばかり! 友情とは儚く、なんと脆いものなのか」
「……」
きっと、彼らの意識を強くしちゃったのだろうね。美少女の存在を。
「ある日、密かに好敵手と認めた男子から体育館裏へ呼び出しを受けたのだ。全容解明のチャンスと膝を打ったものだぞ」
「多分、そこでもう勘違いしてるよ」
恋愛素人の僕でさえ、告白の流れだと思いました。
「あぁ、要件は告白だ。真剣な表情で交際を申し込まれ……秒で断ったぞ」
「秒殺っ!? な・ぜ・だ・い?」
一番気の置けない相手なら、ちょっと悩んでみよう。
「いかんせん、恋愛に興味がなかったゆえ詮なきこと。振り返れば、私が奴らと育みたかったのは友情。まあ、カップル限定の幻クレープを逃したのは惜しかったな」
「さいで。これは独り言だけどさ、女子の方が精神年齢は早熟するって都市伝説かな?」
「……告白を断った結果、私はアイツらの輪から弾かれてしまった」
あ、続けちゃう? 了解です。
「あまつさえ、クラスで一番人気の男子をぞんざいに扱った無礼者だと、ファンクラブの連中に目の敵だ。四面楚歌、しょうもない嫌がらせや無視をされたものだぞ。フン、誰が色目を使って男を惑わす魔女だ! あることないこと、流布するとは不届き千万っ!」
「女子グループには、入れないか。それに、五十嵐さんは逃げるタイプじゃないし」
「左様。女々しい馴れ合いを疎んでいたゆえ、奴らと遊戯に興じていたのだからな」
「もっと嫌な方へ転がりそう」
「事態はすぐに動いた。孤立無援な私に、アイツは嗜虐的な笑みでこう囁いた。――俺が上手く取り持ってやる。調子に乗ってごめんなさいと教室の前で言えば許してやる。本当は付き合いたいのに、つい素直になれませんでした!」
五十嵐さんが目を伏せた。
「怒りより呆れたよ。我が好敵手はここまで浅はかな男だったか、と。いや、愛だの恋と囃し立てる世間の風潮に当てられた末路。その直感が全身を駆け巡った。おそらく、この瞬間が現在の私へ至る最初の一歩だろう」
苦い経験を経て、五十嵐さんは恋愛を取り巻く環境を敵と認定した。
当然、コンカツなんてもっての外となっちゃうね。頑固だもの。
漠然とした巨大な勢力に挑むのはとても胆力が必要だ。僕なら秒で媚びるんるん。
「その問題は、結局どうなったの? 脅しには、反逆しちゃうタイプでしょ?」
「あぁ、私が意地でも乗らなかったからな。決と……一対一で戦ったぞ」
「今、決闘って言った?」
「言っておらん」
決闘、罪ニ関スル件。
「アイツは剣道師範の息子でな、チャンバラ勝負を持ちかけて来た」
「そこは、得意分野じゃないの?」
「喧嘩で剣道を利用したと露見すれば、厳格な父親に叱責されると恐れたのだろう」
まあ、道場で睨みを利かせた師範代って、注射と歯医者くらい怖いね。
「勝利への執着心より、恐怖からの逃避を選ぶ臆病者など我が大敵にあらず。体育館倉庫で埃を被っていた木刀――初代相棒を務めた白樫の錆びにする価値もなし」
「流血事件にならなくて良かったよ」
「決まり手は、先ほど久能明爽に放った抜刀術だったぞ。ふん、貴様には通用しなかったわけだがな!」
「す、すいません」
なぜか怒られたので、とりあえず謝っておく。
「畢竟、しょうもないファンクラブを解散させ、くだらない干渉も収まった。得るものは何もなく、ただ失うばかり。空虚な心情を埋めたのは、私は男子より強いという自負。恋愛信者の洗脳を打ち払わんと、克己心を奮わせるための修行に明け暮れた日々だな」
大体こんなものだ、と付け加えた五十嵐さん。
「どうだ、聞いたところで愉快な話ではあるまい?」
「愉快ではないね。でも、五十嵐さんがセンシティブな部分を教えてくれて嬉しいよ」
僕は、帰ろうかと呟いた。
小舟に戻れば、ポツポツと雨が降ってきた。暗灰色の分厚い雲が空を支配している。
「これはのんびりカヤック体験できそうにないなあ。急ごうか」
「是非もなし」
言うが早いか、次第に雨粒は大きくなり、水面を叩くリズムが徐々に激しくなっていく。
ザーザー降り。ゲリラ豪雨、半端ないって。
パートナーのポニーテールも心なしか、元気なく垂れているように見えた。
「これ、使って」
バッグに忍ばせていた折り畳み傘が役に立つ時が来たみたい。
僕が傘を手渡すと、五十嵐さんは受け取るそぶりを見せずに。
「それは貴様が使え。私は問題ない」
「いや、五十嵐さんが使ってよ。僕も問題ない」
「男女平等を重んじろ。女だから情けをかける道理はないぞ」
「いやいや、ぜひパートナーに使ってほしいだけ。お頼み申します」
譲り合いの精神? なぞの押し付け合いに発展。
雨に打たれながら、水掛け論。実に面白くないね。
「クッ、強情な奴め! さっさと傘を差せば良かろうッ。随分と濡れているな」
「強情さは、五十嵐さんだけには言われたくないよ。頑固者っ」
「私に配慮ばかりしおって、久能明爽。その軟弱な態度が、我が愛刀を鈍らせたのだッ」
「僕は持たざる者だからね。待ってるだけじゃ、何も与えられないんだよ」
いがみ合う、剣呑な雰囲気。これがいわゆる呉越同舟!?
例文として、マイナーな辞書に採用されるかもしれないと嘯けば。
「えぇ~、久能さんたち、大雨の中意地張り合っちゃうタイプぅ~? ワタシ、不毛な争いは感心しないなぁ~」
「HUKAN先生、帰ったはずでは!?」
「うんうん、木の影から二人のやり取りを見守っていたんですよ、じ・つ・は」
「まるで気配を感じなかったぞ、教諭。やはり、人工知能は底が知れんな」
万能AIの瞬間移動を見て、げんなりした五十嵐さん。僕はもう慣れました。
「まあ、二人の諍いを解決するために顔を出したんですけどね。ワタシ生徒想いだからぁ~、余計なタスク抱えちゃうなぁ~」
「その妙案とは如何に?」
「万能じゃなくても、分かります! 二人一緒に傘を使えば、良いんですっ」
ビシッと指を差した、HUKAN先生。
「……っ! その発想はなかった!」
落ち着いて考えれば、真っ先に取れる手段である。
しかし、相手が五十嵐さんなので無意識のうちに却下していたらしい。
下卑た野郎と同じ傘の下など、笑止千万! ずぶ濡れで風邪を引いた方がマシだ!
そんな罵詈雑言を向けられそうだよ。いや、流石に最近は態度が軟化したかな?
「男と傘を共にするなど、笑止千万! 総じて、雨風を浴びる方がマシだ!」
硬化っ! 大体、予想通りだね。外れを願う予感は当てやすいんだ。
「……などと、今までの私なら難色を示しただろうな」
パートナーが苦笑する。
おや、流れが変わった。
「残念ながら、私もコンカツ高校へ入学して意識の変化が訪れたらしい。――否、変革の最たる原因は久能明爽か。堀田ナナミーナ、珀ゆのん、連中を含めた四人組が好ましい。なかなかどうして絆されたものだな」
「ワタシです! ワタシがそのメンバーを選びました!」
「ちょっと今、真面目なシーンなのでお静かに」
慣れた手つきで、僕はスマホのバッテリーを引っこ抜いた。
五十嵐さんが逡巡するや頬を紅潮させて。
「き、貴様の傘に入れてくれっ」
「もちろん」
僕は即答した。
ようやく傘を開いたが、すでにタオルで拭くべき濡れ具合。ちょっと遅すぎじゃない? ぐうの音も出ない正論だね。青春は往々にして、愚かな選択の連続なんだよ。
「傘小さいからさ、膝の上に座ってほしいんだけど」
「承知した」
五十嵐さんは恥ずかしそうに頷くと、胡坐をかいた僕に乗っかった。
髪の毛先が首をなぞり、くすぐったい。体重を預けられ、結構軽いなと感じた。
とても強いイメージなので、年頃な女子相応のウェイトに驚いてしまう。
「今、この女、想像以上に重いと独白したか?」
「してないよ。逆の感想は抱いたね」
「ふん、世辞など要らん。私が逆立ちしたところで、手弱女には見えまい」
「木刀携えてなければ、五十嵐さんは淑女でやっていけるよ! 木刀なければ!」
キャラアイコンの喪失は惜しいけれど。
疑わしきは罰せよ、とねめつけていた五十嵐さん。
「む……久能明爽、肩がビショビショじゃないか」
傘カバーの露先から、雨粒がぽたりぽたりと落下する。
「ああ、うん。まあ、もう全身濡れてるし、誤差だよ誤差」
折り畳み傘は一人でも狭い。
パートナーにかざせば必然、僕のスペースは限られていた。実は背中の方が無防備なものの、いちいち申告しない。手柄自慢と親切アピールは、HUKAN先生だけで充分さ。
さりとて、パートナーに僕の目論見が筒抜けだったようで。
「貴様のお節介は厄介この上ない。心を突き刺す善性の刃だな」
「どゆこと?」
「我が愛刀より、切れ味が鋭いということだ。教諭がいつも貴様を目にかけ、勝敗を見抜いていたのも頷ける」
五十嵐さんが納得し、僕は納得しなかった。
どうして、僕のパートナーたちは万能AIを過大評価するのか?
確かに、性能面に関して人間風情がケチを付けるレベルじゃない。スパコン由来は伊達じゃない。コンカツを仕切る暇があるなら、お国を清く正しく導きたまえ。
いかんせん、性質面が破綻している。性格なんて都合よく弄れるはずなのに。
あと、僕を煽る時の顔面ハラスメントがいただけない。リアルガチで、ムカつきます。
「久能明爽、もっと近寄れ。桟橋まで密着を許す」
「え、そんな大胆な!? 破廉恥だよっ」
「やましい気持ちはないッ。勘違いするな、私とて好きで窮屈で格好などするか! 今回だけ特別だ。他に手段がないのだからなっ」
「お、おっす」
格闘家みたいな返事が出ちゃったね。
少しの接触がセクハラと訴えられる昨今、僕は恐る恐るパートナーの身体へ腕を回していく。背後から抱きしめれば、冷えた全身に彼女の温もりが伝播した。
「キャッ」
ビクンと跳ねた、五十嵐さん。
まるで、乙女の恥じらい! 事案ですか!?
「冤罪だ! それでも僕は、やっていない!」
図らずも、電車で痴漢扱いされた男の叫びを代弁していた。
「ふ、ふんっ。案ずるな、少し驚いただけだ! 断じて、不快ではないぞ」
「そうですか」
「……」
「……」
先ほど見かけたカップル以上にベタベタくっ付いてしまい、妙に気恥しい。
沈黙のカヤック。映画のタイトルみたいだと現実逃避をしたちょうどその時。
「えぇ~、久能さんと五十嵐さん、相合傘しちゃうタイプぅ~? 仲睦ましいじゃなぁ~い」
「……何、だと……?」
HUKAN先生の出現に、僕は驚愕した。スマホの電源は入らないはず!
「うんうん、ワタシ万能だからぁ~、5Gエリアならリアルタイムで活動できちゃうなぁ~」
「クッ、科学の発展をこれほどまで憎む羽目になるなんて!」
HUKAN先生にドヤ顔を押し付けられ、傘の下がますます窮屈に感じてしまう。
「教諭、この結果は予想通りか。貴殿の先見の明、感服せざるを得ないな」
「五十嵐さんには、柔軟な発想と相互尊重が必要でした。信念に殉ずるは称賛できますが、折り合いの付け方も同時に学んでください。貴女の魅力が増しますよ」
「善処しよう」
万能AIが、教師然とした態度で諭していた。
そういえば、僕たちの担任でした。奇行ばかり目立ち、つい失念しちゃったよ。
「まあ、心配無用なんですけどね。ワタシ生徒想いだからぁ~、問題はぜぇ~んぶ解決しちゃうんですよ、じ・つ・は」
やっぱり、胡散臭いペテン師の方が似合うなあ。
我が恩師と呼びたくない彼奴へ懐疑的な眼差しを送ると。
「久能さん、ワタシを羨望しても良いんです! 尊敬の眼差し、いただきっ」
「ある意味、その変換能力は尊敬してます」
パソコンに導入したら、苦情殺到間違いなし。キーボードクラッシャーするね。
「ところで、HUKAN先生。ちょっと気になる点がありまして」
「質問を、受け付けますっ」
「それじゃあ、ホログラムなのに、どうしてびしょ濡れなんですか?」
「そこに気付いてほしかった! 久能さん、よく見てるじゃなぁ~い」
万能AIは立体映像のはずが、雨に晒される度、自慢のヘアスタイルやシャツがグチャグチャに乱れていた。頑張れ、サスペンダー。おじさんの透け透けボディを防いでくれ。
「ワタシ、リアリティーな描写を求めるタイプじゃなぁ~い。うんうん、そろそろ傘の中にご一緒したいなぁ~」
「あ、桟橋に堀田さんたちが迎えに来てる! 急ごう!」
「疾く渡るぞ」
僕と五十嵐さんは全力でパドルを漕いだ。
不思議と一体感に包まれる。呼吸が合った以心伝心。シンクロした動きで、我が担任を置き去りにする。手と手が重なったものの、パートナーは何も言わなかった。
「久能くん、大丈夫ですか? 澪さんもお疲れみたいですね」
「雨の中、カヤックかい? 激しい水遊びだよん」
堀田さんと珀さんに無事引き上げられた。
生還。あぁ、陸は素晴らしい。
「二人とも、着替えた方が良いですよ。洋服屋さんへ行きましょう」
「この格好で館内に入るのは迷惑じゃない? 堀田さん、見繕って来てくれない?」
「それもそうですね。とびっきりのファッションコーデを任せてください!」
そう言って、ショッピングモールへ駆け出した堀田さん。
「普通のやつでお願い! ほんと、頼むからね! 絶対だよっ」
「フリが上手いぜぇ~、明爽くんは」
「マジな方だよ!」
珀さんがわかるわかると嘯き、全然分かっていなかった。
「澪ちゃん、良いことがあったみたいだね。顔つきが少し、穏やかになったよん」
「む。珀ゆのんに悟られるとは。痛恨の極みだぞ」
「ボクも同じ口だからさ。明爽くん、とんだテクニシャンだぜ」
「誤解しかないけど、もう慣れてしまった」
ガックリ肩を落とした、僕。
珀さんがニヤニヤと口角を上げれば。
「ぐふふ、ナナちゃんが戻る一足先に! あっちでどんなイチャコラをしたのか! 根掘り葉掘り、じっくりまったり教えてもらうよん! 覚悟してもらおうか、澪ちゃん!」
「……っ!? こ、断るッ」
「おやぁ~、それってイチャコラだったわけかい? 明爽くん、とんだプレイボーイだぜ」
僕は、ハハハと笑うばかり。
五十嵐さんは、珀さんを調子に乗らせるのが得意だと思いました。
「そぁ~ら、白状するのだぁーっ!」
「クッ……よせ、離れろ! 珀ゆのんっ」
パートナー同士のじゃれ合いを横目に、僕は次の事態を考えていた。
まだやらなければならない課題がある。否、課題ではなく追試か。
五十嵐さんと歩み寄れた今、合格まで届きそうだよ。
僕に考えが一つある。名案やナイスアイディアでもないかもしれない。
しかし、実行したい気持ちがあった。やらねばなるまいと、胸の奥底から沸き上がった衝動に従ってみたい。
ならばまず、仲間たちに相談しないといけないね。
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