第33話 赤点

《5章》

 ――久能明爽、赤点取ったってよ。

 期末テストの成績に、一喜一憂した生徒たちの狂乱が落ち着いた頃。

 僕はぽつんと、廊下に佇んでいた。


 視線の先、テストの順位が盛大に張り出されている。成績上位者の欄には、トクセン組の名が多く連なり、一位はなんと加納君。いや、オッズは限りなく1倍に等しいね。


 その順当すぎる結果はさておき、意外にも比木盾君が善戦していた。トップ50から弾かれたものの、あと一歩でランクインの位置である。

 ――あぁ~、俺! 全然、勉強してねぇから! 全教科、一夜漬けだぜ!


 比木盾君の勉強してないアピールは意外と信じていた。

 なんせ、彼はやらない時は本当にやらない奴なのだから。


 堀田さん、珀さん、御留姉妹、見知った顔の名前を確認がてら、僕は感心するばかり。

 凄いなあ。普段ちょっとアレでも、やっぱりハイスペックな人たちだよ。

往々にして、トクセンメンバーは伊達じゃない(一部、例外を除く)。


 …………

 ……ふぅ。

 そうだね。誤魔化すのはやめよう。

 僕は他所見せず、もう一度現実を直視するや。


 追試受験者――久能明爽、五十嵐澪。

 成績上位者よりもデカデカと張り出してくれやがったよ。

 一体全体、こんな所業をしでかす輩はどこの万能AIなのか。

 俯瞰せずとも、我が担任とすぐ分かっちゃうなぁ~。


「うんうん、どうしてこうなった?」


 図らずも、僕は辛酸を舐めるように期末テストの悲劇を思い出していく。

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