第12話 おひとり様

 どうも、明爽です。

 コンカツ高校史上初のカルテット。

 そんな肩書を持つ僕だけど、一人でいる時間がやけに長いのは杞憂かな?

 専門店街エリアを歩く途中、他のトリオやコンビを見かけた。


「おせーぞ、デカ女!」

「うるさいわね、チビ男!」

「二人ともケンカはやめて~」


 大貫君(小さい)、小貫さん(大きい)、中貫さん(大きめ)たちとすれ違う。

 トクセンでは、大中小の身長アベコベトリオと呼ばれていた。


「デカ女のくせに、どうして迷子になってんだ! もっと目立ちやがれ!」

「ごめんなさいね! チビ男が小さすぎて、どこにいるか見当たらなかったのよ!」

「ああん? やってやろうか!」


 一触即発と思ったものの。

 大貫君は小貫さん、中貫さんとしっかり手を繋いでいた。

 ふと、僕は独り言ちた。


「……アレだ。宇宙人が二人組に捕まってる写真のやつだ」


 必死に抵抗する大貫君。


「おいぃぃい! ぶら下げんの、やめろ!」

「プークスクス。か弱い女子に持ち上げられて、あんた恥ずかしくないわけー?」

「大貫君……すごく、軽いです……」

「覚えてやがれぇえぇー! 俺はコンカツ高校一、ビックになる男だからよぉぉお!」


 捨て台詞を残すや、リトル大貫はエージェントたちに連行されるのだった。

 ……クラスメイトたちが楽しそうで何よりです。

 級友のコンカツの進捗に目を向ければ。


「うんうん、みなさん、順調に距離感縮めてるじゃなぁ~い。ワタシです、ワタシが企画しました!」


 うわ、出た。


「えぇ~、久能さん、またおひとり様気取っちゃうタイプぅ~? もっとコンカツ楽しんでほしいなぁ~。大事なのは、繋がりです」

「今から五十嵐さんを迎えに行きますよ。嫌でも相手してもらおうと思って」

「それで良いんです」


 案の定、HUKAN先生は僕に付いて来るみたい。

 控えめに言って、耳元で飛ぶ蚊くらい鬱陶しいですね。

 男一人女三人組を謳歌するはずが、僕は気づけばだいたいぼっち。

 デイダラボッチと語感が似てるなあ。そんな戯言を抜かす寸前。


「久能さん、ワタシとばかり行動してペアみたぁ~い。ワタシ、万能だからぁ~、その気持ち分かります。まあ、先生はみなさんと平等に交友しちゃうんですけどね」


 イライライライライライライライラ。


「……」


 明爽です。

 最近、キレやすい若者になったと自覚しています。

 人は簡単には変わらない。変われないと言うものの、僕は昨日今日で怒りの感情が沸々と湧き上がるようになりました。


 さりとて、感情のコントロールに長けたとも自負します。そうでなければ今頃、スマホを床に叩きつけてるよ。いや、ほんと。リアルガチで。


「久能さんは控えめな部分が長所であり、弱点みたいねぇ~」

「HUKAN先生は主張が強い部分が短所であり、欠点です」

「なかなか、ユニークな発想じゃなぁ~い。それ、いただきっ」


 万能AIに悪口は通用しない。全部、右耳から左耳へ漏れ出ちゃう。


「先生のおかげで、僕は飛躍できそうです。でなきゃ、アイデンティティを保てない」

「ワタシもそれ思った! そこに気付けるなんて、やっぱり通じ合ってるっ」


 平凡な人生史上、最も嫌な共感を得て、僕はペットショップへ足を延ばした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る