第3話 HUKAN先生

 休憩時間。

 お花を摘んだ後、僕は廊下でHUKAN先生を呼び出してみる。


「え~、久能さん。ワタシと内緒話したいタイプぅ~?」

「根本的な疑問なんですけど、なんで僕にパートナーが三人いるんですか?」


 怪しげなおじさんもとい万能AIは、僕のスマホ画面に映っていた。

 スパコンが創作した人工知能ゆえ、情報端末を渡り歩くのは簡単だって。


「パートナーが一人でも荷が重いです。それなのに、現状コンカツする気がない相手が二人もいるわけで……もしかして、貧乏クジ引いちゃった?」

「対立したって良いんです。うんうん、それもまたコンカツじゃなぁ~い」

「あの、もう一回マッチングのやり直しとかできません?」

「ワタシ、万能だからぁ~。マッチングの結果は正確なんですよ、じ・つ・は」


 要するに、変更は認めないと。

 前例主義? お役所仕事かな? 万能AIこそ、柔軟な発想で臨んでほしい。


「――分かります。カルテットの導入は、すっごく試験的じゃなぁ~い。あなたが選ばれた意味があるんです。もっと俯瞰しなくっちゃ。まあ、久能さんには期待してるんですけどね」


 名画の贋作を売りさばく古物商のごとき笑みを携えた、HUKAN先生。

 控えめに言って、顔面がとても詐欺師的ビジュアルですね。胡散臭さがにじみ出てます。


「HUKAN先生が頼りにならないことが分かりました。しばらく、足掻いてみますよ」

「なかなか面白いジョークじゃなぁ~い。それ、いただきっ」


 両手の人差し指を向けないでください。煽り、ダメ絶対。

 誠に遺憾ながら、肩に小さなおじさんが乗ってきた。立体映像のはずが、重圧が凄い。

妖精使いの久能って噂されたらどうしよう。せめて、女の子タイプにしてください。

 廊下を歩く足取りが重いのは、気のせいじゃなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る