025.これからはさ
僕は、はっきり顔を思い出した。あの瞳。あの横顔。手の温もり。
あの時、助けてくれたのは人魚で、それはアオさんだ。
高鳴る鼓動。これが証明だ。
僕は思い出した瞬間にまた、恋に落ちてしまったようだ。
砂浜に着いた頃にはすっかり陽が傾き、辺りはオレンジ色に染まっていた。
僕は全身ずぶ濡れで、砂浜に水滴を垂らしながらあがった。アオさんは波が立っている辺りで尻尾を丸めて座っていた。
「ユウ君!今日は楽しかったよ!」
「こちらこそだよ。本当にありがとう!」
僕は疑問に思っていたことを聞いた。
「あっ、そうだ。なんで水中の中でもアオさんの声が聞こえたの?それになんか頭の中に響くような感じで、変な聞こえ方だったし」
「あー、それね。私たちはさ、たまに他の人魚と泳ぎに行くことがあるんだけど、その時は音波を使ってやりとりしてるんだ」
「音波?」
「そう、音波を出す時は特殊な口の動かし方をして出してるの。ユウ君にはここに音波が伝わって聞こえたんじゃないかな?」
アオさんは自分の耳の後ろあたりを指刺した。
「あー、耳小骨かな?」
「たぶんそう。そこに音波が伝わると骨が振動してユウ君の頭の中に響くように聞こえたんだと思うよ」
なるほど、そういうことか。だから響くように聞こえたんだね。それに、確かにアオさんは変な口の動かし方をしていたな。
「なるほどね。よく分かったよ、アオさん」
アオさんはなぜか急に真顔になる。
「ねぇ、アオさんって呼び方やめない?」
「え?」
「なんかまだよそよそしいんだよね。もうこれからはさ、アオって呼んでよ」
アオさんは微笑んだ。僕はキョトンとする。
「あ、あぁ。じゃあ、アオって呼ぼうかな」
少し照れてしまいそうだ。うまく隠せるように、そっぽを向いた。
「うん!やっぱりその方が良いよ。私はユウ君呼びでしっくりきてるからこれで言うね」
「なんなんだよ。そっちも呼び捨てにしないのかよ」
「なんか、『ユウ』って私が呼ぶの違和感ない??」
アオは首を傾げた。
「そうだね」
僕は笑った。
別れの時間だ。
「じゃあ、またね」
アオは腰まで海に浸かった後、振り返って僕を見る。
「うん、またね」
僕はアオの明るく満足な顔を見て、安心した。手を振って、見届ける。
アオは海の中へ潜って行った。
僕はアオの姿が消えても、しばらく海を眺めていた。そして、大きく深呼吸をした。
「はぁ、やっと軽くなったな」
僕は家に向かって歩いていく。
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