015.目撃
「うぉほほほおぉぉーーーー!!!」
やってきたのは近くにある商業施設。ここは田舎なので、そこまで規模は大きなものではないが、人魚にとってはとてもすごいものに見えるようだ。
「すごい!!人も多いなー!
大きな建物だ。宮殿みたいな大きな石がどっかりある。これはどうやったんだろ?運んだのかな?
いや、それは無理か。人間は、なにか、神の力のような、浮かせる力を持っているの??」
「持ってないです」
僕は速攻で否定した。そして、僕は耐えきれずに少し笑ってしまった。
「どうしたの?」
「いや、その感じ。その感じは大きくなっても小さくなっても変わらないんだと思って」
「ば、馬鹿にしないで」
人魚は顔を赤くしながら腕を組んでいた。
「時間が無いですね。早く買いに行きましょう」
「そうね!」
2人は、建物の中へ入っていった。
自動ドアが開いた。
「うわっ?!」
人魚は後退りした。
「何これ?勝手に開いたんだけど」
「それは自動ドアって言って、上にあるセンサーが反応して、人や物を感知したら開くようになってるんです」
僕は上にあるセンサーを指差した。
「す、ずこいね」
人魚と僕たちは歩みを進めた。
「うわ〜ーー!」
建物の中は店で溢れていた。雑貨、食品、家具。さまざまなものを扱う店が所狭しと並んでいる。
上には広告が釣り下げられている。赤い文字や黄色い文字がたくさん書かれていて、強調されている。
人がそれぞれ買い物を楽しんでいる。ある者は子供と一緒におもちゃを買い、ある者は1人で何かいい食材を買おうとしてご褒美を自分にしているように見える。
人の生活が見える『買い物』というのを、人魚は人間の文化を見る視点で楽しんでいた。
「楽しいね!買い物!」
「そうだけど、実際に自分で買うということをするともっと楽しいかも」
「うわ!いいね!
あっ!私、何も持ってきてない!」
「あぁ、いいですよ。お金なら、僕が出すので」
「お、お金?なにそれ?」
「買い物をするときに必要なものですよ。人魚の世界にはお金は無いんですか?」
「そんなものは無いわ。私たちは物々交換で取引をしていたから。
やっぱり、歴史書通りだわ。人間は本当に『お金』というもので取引するのね」
「そうですよ。それじゃあ、これ渡しておきます」
僕は500円玉を1つ渡した。
「これが、お金??こんな塊に価値があるの?」
「人間の世界ではそうなりますね」
「その紙切れは??」
人魚は財布の中にある千円札を指差した。
「あぁ、これは千円札って言って、その硬貨より価値が高いんです」
「ええっ?!この塊よりその紙切れの方が価値が高いの?」
「ま、まぁそうです」
「人間ってやっぱり変わってるね」
「まぁ、そうですね。
でも、お金の方がいいことが多いんですよ、経済的に。説明するとかなり難しくなるかもですけど」
「そうなんだねー」
僕たちはそんな会話をしながら本屋に入った。
「うーーん」
僕は立ち並ぶワークたちを睨みながら歩いている。たくさんある日本語文字のワーク。
人魚にとってどれがいいのか、さっぱりわからない。
「ユウ君!!これがいい!」
ワークを両手で大事そうに抱えていた。表紙には、『猿でも分かる!!ひらがなワーク』と書かれている。
人魚には分かるのか?と内心ツッコミを入れた。
「じゃあ、それにしましょう」
自分で選んだものの方が、やる気が出るだろう。僕はそう思った。
「やったー!♪次は初めての服〜」
人魚は喜んでいた。本当に良かった。
──
「あれ?ユウじゃん」
カイは部活帰りに本屋に涼みに来ていた。遠くの方からユウの姿を見てそう呟いた。
「なにしてるんだろ?って、あれ??一緒にいる子、女の子じゃん!?」
カイは本棚の影に隠れた。そして、2人の様子を静かに見る。
女の子の姿ははっきりとは見えなかった。
おいおい〜。なんだよ??あれ。
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