014.初めてのお出かけに行くぞ!!

 人魚の瞳はあの時と同じ瞳だった。無邪気だった昨日の人魚。


 僕はその瞳に心を打たれた。きっと人魚は僕と世界の見え方が違ってて、それを僕も味わいたいと思ってしまった。


 これはもう、協力するしかないな。


「……分かりました。人間になれるように、僕も協力します」


「ほんと??やったー〜!」


 人魚は両手を上げて喜んだ。


「本当にありがとう!ユウ君!」


 人魚は僕の手を握った。


「いいですよ。


 ……それより、いったい何から始めれば良いのでしょうか?人間の生活に慣れるためには…」


「実は私、やりたいことリスト作ってきたんだよね!」


 そういって人魚はとある白い紙を机の上に広げた。


「ジャジャーン!!」


 僕はその紙を見て止まった。ここにきて、人間と人魚との間に大きな障壁があることに気づいた。


「なんですか?これ?読めない」


「嘘?私結構字はきれいな方なんだけど」


「きっと、話す言語は同じなんですけど、使っている文字が違うんですね。これをまずはどうにかしないと、ダメですね」


「第一の試練、文字を覚えよう!ってことだね」


 僕たちは目を合わせた。


「そうですね。とりあえず、文字のワークを本屋に買いに行きましょう。着替えてくるので、待っていてください。あと、人魚さんも、服がかなり潮臭いので、着替を持ってきます」


「ご、ごめんね」


 人魚は舌をぺろっと出して笑った。


「ついでに、服も買いに行きましょう」


「ほんとに?!」


「人間の生活に慣れるためには必要なことです。似合う服が有れば、ですけど」


「いいね!」


 僕は立ち上がると、出かける服に着替えた。


「さぁ、行きましょう」


 僕は人魚に上下半袖の服を渡した。少し大きめだが、まあ仕方がない。


「なに?その格好?地味だなー」


 人魚は僕を細い目で見てきた。


「僕、結構服のセンスは褒められるんですが?」


「えっ!?そうなの?人間も変わってるね」


 素で驚かれて、ちょっと悔しい。


「まぁ、行きましょう」


「そ、そうね!」


 人魚は形状変形を始めた。白くすらっとした脚が尻尾の部分から変形していく。


 人魚は立ち上がった。


「いこっか」


 身長は僕より少し低いくらいになった。ツヤのあるきれいな髪は彼女の腰あたりまで垂れ下がっている。


「それじゃあ、初お出かけにレッツゴー!!」


 人魚は片腕を高く上げて、笑顔で玄関を飛び出した。

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