011.なんで??

 今日も学校が終わり、僕は早速下校した。学校のそばの道路を歩きながら、運動場を見ると、様々な部活の部員が色とりどりな服を着て、それぞれの準備をしていた。


 こんな炎天下の中、部活をするのは本当に大変だな。


 僕はスマホをポケットから取り出した。学校では基本、使用禁止なので電源は切っていた。


 電源を入れると、通知が何件か来ていた。それを開くと、相手はお母さんからだった。


『夏休み、なにか食べものとか日用品とかを持ってユウの家に行きます。都合の良い日を教えてください』


 僕たちは4人家族だ。お父さん、お母さん、僕、そして中2の妹。


 僕は県内で1番の公立高校に進学するために、この近くに越してきて、一人暮らしをしている。そのため、長期休暇になるとお母さんが心配して、こうして荷物を届けてくれることになっている。


 住んでいるのは、築15年のアパートの2階。狭い間取りだが、一人なので不憫ではない。


「お盆には帰るから、別にいいのに……」


 僕はスマホと会話をする。


 でも、折角だからお願いしよう。毎月のお小遣いではやはり生活が厳しかったから、僕としてはありがたい。


『基本、いつでも大丈夫。お盆には帰るから、その時まででよろしく』


 僕がそう送ると、すぐに既読がついた。


『分かりました』


 お母さんはそれだけ送ってきた。僕はポケットにスマホをしまった。


 気づいた頃には、もうアパートの前まで着いていた。


 僕は一段一段、階段を登っていった。


 今日はとりあえず、授業の復習して、数学のワーク解いて、模試の対策でもするかー……と、そんな考えを巡らせていた。


 その時だった。僕は階段が濡れていることに気がついた。


「雨、降ったっけ?」


 それはない。しかも、全体的に濡れてはいない。何か大きくて濡れたものが這いながら進んだような跡があり、それが2階の共通廊下まだ続いている。


 僕は階段を登り切って、僕の家の玄関を見た。すると、そこには俯いて、座り込んでいる影がある。


 あの影……。特有の丸いフォルム。体の大きさ。……間違いない。


 人魚だ。


「……なんで??いるの?」


 僕が近寄って、人魚は僕を見た。そして、少し困ったように微笑んだ。


「……もどって来ちゃった!」


 今年の夏休みは、何か大変なことが沢山起きそうだ。

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