010.高校生初めての夏休みが始まるよ!!
「おいおい、どうした?ユウ。いつものユウらしくない。さっきの授業はなんかすげぇ眠そうだったな?
珍しく、夜ふかしでもしたのか?」
休み時間。僕が自席で寝込んでいる時にそう言ってきたのは、僕の数少ない友達である坂丘カイだった。彼とは出席番号によって1番最初の席が近くなり、話してから意気投合し、友達になった。
制服をかっこよく着崩し、髪型は横の部分を短めに刈っていてツーブロックが似合っている。
整った顔はまさに爽やかで、スポーツ爽やか系イケメンとはこのことを言うのだろうと思う。
それに、この高校に通っているということは決してバカではないということも、紹介しておこう。
「あぁ、ちょっとな。昨日いろいろあってな……」
「そうか…。ユウにしては珍しく、遅くまで勉強でもしてたのか?
そういや俺も、昨日の部活はマジでキツかったんだよ。なんたって監督がさ……」
「いや、普通に違う」
「そうそう、もう昨日本ッ当に機嫌悪くて……って。
えっ?!なになに??じゃあ何?恋愛関係??」
僕は顔を上げた。カイは1人興奮気味で、盛り上がっている。
幼い人魚の世話をして、気づいたら普通にもどってて、頬をひっぱたたかれて、海に返したなんて、どうやって説明すればいいんだ。
僕はため息をついた。
「……違うよ。てか、カイはなんでよく
「なんだよ?そのため息と間は??まぁ教えてくれないんならいいけどさ」
「だから違うってば。
……それよりも、カイはどうなんだよ」
「おお?聞いちゃいますか?ユウ殿」
「なんでちょっと嬉しそうなんだよ」
カイはチラッと周りを見渡した。
カイは僕たちの同じクラスのとある女子、望月マキのことが好きらしい。そのことは結構前に明かされていた。
彼女は、吹奏楽部に所属している。確かに、スラッとした体とその顔は綺麗だ。他の男子からも人気だという噂を、僕でも耳にするくらいな存在なので、彼氏になるための倍率はかなり高そう。
彼女は吹奏楽部。カイはサッカー部と、接点がない。しかし、クラスは同じ。新年度が始まって、クラスのグループラインから彼女のラインをゲットした時のカイときたら、あの表情は今思い出しても笑えてくる。
だが、ラインは『よろしく』だけで止まっていて、カイは絶望していたのだった。
カイは僕に手招きをした。僕はカイの方に耳を近づけていく。
カイは耳元で小さく僕に言った。
「実はさ、最近連絡を頻繁に取ってるんだよ」
僕はカイから耳を遠ざけて言った。
「えっ。すごいじゃん」
「だろ?
それで、夏休みに遊びにいくっていう予定まで立ててしまったんだよ!!」
「……それもう勝ち組じゃん」
「だろだろ??
まぁ、男女複数でなんだけど、とりあえず遊べるかもしれねぇ!これはほんとにチャンスだ!」
カイは笑っていた。
そうか、もうすぐ夏休みだ。
「まぁ、思いっきり楽しめよ。それで、できたらゲットしてこい」
「あぁ、やってやるよ!ユウ」
カイは親指を突き立てて僕に見せた。
「それよりさ、ユウ。グループラインいい加減入れよな?」
心配そうな顔をしているカイ。
「いいや、別に。どうせマトモな会話してないでしょ?」
「確かにそうだけど、社交辞令として入っとけよ?あと、いい加減俺のライン既読無視するのもやめろよな?」
カイは僕に指を突き立てる。
「学校でしゃべるし、その方が楽しいじゃん」
カイは僕の机がドラムだと思っているのか、指を打ちつけている。
「うんぁぁぁ、それもそうなんだがな??……まぁとにかくだ。既読無視は俺以外にはするなよ?」
「……分かったから、もうチャイム鳴る」
「わーかってる分かってる。まぁそういうことだから」
そして、カイは席に座った。席替えをして、遠くなってしまったのだ。
僕は窓側の席だった。不意に青空を見上げてた。
青い空に、白く丸い雲がひとつ。ゆっくりと風に流されている。
そうか、もうすぐ夏休みか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます