第三章 目覚めたのは冷酷な人魚姫!?
008.誤解です!!
「てか、ここどこ?私なんでここにいるんだっけ?……思い出せない」
人魚は辺りを見渡した後、頭を抱えた。そして、胸に手を当ててゆっくり呼吸し、この世は夢でないと肺の空気を満たして確認している。
僕は説明する。
「あなたは、ひどい怪我だったのと熱を出していて倒れていたんです。倒れていたというか、流されてきたんだと思いますけど。それで、僕が看病して、ここで寝ていたんです」
「……そうだ、私。家出したんだ。それであまりにも海が荒れてて、いろんなところ怪我して気絶して……」
「そう、そうだと思います」
僕は思い出した。確かに一昨日は非常に強い台風が隣の県に上陸して、警報が出ていたな。学校も臨時休校になったし。
流木もいつもより多く流れ着いていたのはそういうことだったのか。
「ちょっと待って。なにこの服」
人魚は服を摘んでいる。
「あぁ、熱を出していて、汗もぐっしょりだったので着替えさせました」
人魚は顔を真っ赤にした。そして、胸の部分を腕で交差させて、少し後ろに引いた。
「……つまり、私の裸みたの?」
「……はい。体中全て」
「……は??」
「いや、シャワーを浴びたので、その時に全て見ました」
「シャワーっていうのは、歴史書に載っていた、人間が体を清めるためにする『お風呂』の一種のあれ?」
「……まぁ、間違ってはないですね」
人魚は顔をさらに赤くして、俯いた。体がプルプルと震えている。
やばい、泣かせてしまった!?
「あぁ、でも誤解です!僕は医者を目指してますから裸は慣れていますし、僕の家族は基本裸族なので一緒に暮らしてた時に嫌というほど見てきて、妹とは僕が小学1年生の時までは一緒にお、ふろ、に……」
人魚は赤くした顔を上げて、僕を睨んだ。そして、立ち上がって僕に詰め寄ってきた。
「そういう、問題じゃないの!!!!」
そう言い放って僕を思いっきり平手打ちした。
「──つまり、あなたが私を助けてくれたってことね」
「だから、初めからそう言ってるじゃないですか……」
僕は赤くヒリヒリした左頬をおさえていた。長く弁解したおかげでようやく理解してくれたようだ。
「……ありがとう。でも、まだ許したわけじゃないから」
「……はい」
人魚はベッドの上で腕を組み、僕を睨む。僕は地べたで正座させられている。
「てか、人間って人魚見たら石になるんじゃないの??」
「なんですか、それ?」
「いや、私が持っている歴史書にはそう書いてあったんだけど」
「それ、嘘じゃないんですか?」
「……違う、絶対違うから!」
人魚は顔を赤くしてムキになっていた。
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