007.明日も会えると思ってた
シーツの取り替えが終わり、人魚の方を見た。待っている間、人魚は扇風機に当たっていた。
涼んでいたというよりは、どういう構造で動いているのかを真剣に見ていたと言った方がいいだろう。
気づいた頃には、脚は元の尻尾にもどっていた。
僕は近くに寄っていき、また人魚を担いでベッドにもどした。
寝かしつけた人魚は僕の目をじっと見つめる。
「わかった。センプウキのひみつ」
「なんだ?」
「きっとこびとさんが、あのなかでプロペラをまわしてるんだ!」
「違うよ」
僕はまたも速攻で否定した。
「……もう早く寝な」
「なんか、からだがかるくなったきがする。これがすっきり?なのかな?」
「あぁ、それがスッキリだな」
人魚は笑った。その顔を見て僕も笑った。
「おやすみ」
僕の言葉に人魚は首をかしげる。
「オヤスミ?」
人魚はキョトンとした顔をする。この顔は教えて欲しい時の顔だな。
「『おやすみ』っていうのは、寝る前に言う言葉なんだ。夜安心して眠れて、明日また元気に会えるようにっていう意味かな」
「いいことばだね」
「……そうだな。ほら、まだ熱が引いたわけじゃないからもう寝て」
「うん。
ねぇ。いろいろありがと!!」
人魚はあからんだ頬を上げ、満面の笑みだった。僕は少し照れくさかった。
「……早く治してね。おやすみ」
「おやすみ」
人魚はそうして眠った。
──次の日。
僕は人魚にベットを譲っていたので、地べたで寝ていた。首や肩、あちこちが痛い。そして、メガネをかけたまま寝てしまっていた。
痛めたところをおさえながら、僕は起き上がった。
ふと、人魚の方を見た。
人魚は目が覚めていた。そして、元の大きさにもどっていた。出会った頃と同じ、僕と同級生くらいに。
ただ、様子がおかしい。なぜか僕に怯えている。
「……ああ、おはよう。
よかった。体が元にもどって。熱は?治った?体にまだ倦怠感とかのこって……」
「あなた、誰??」
僕が話しているのを妨げるように、人魚の言葉が部屋を駆け巡る。ほんの少しだけ声が低くなって、大人にもどった人魚。その発言に僕はフリーズする。
「えっ……??」
人魚の瞳は、まるで僕に恐怖しているような、蔑んでいるような目をしていた。
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