006.看病って大変2
鏡の前には普段から身だしなみを整えるためにいろんなものが周りに転がっている。ドライヤーに、ヘアワックスに、もろもろだ。
「ヴァーァァァァァァァァァァァァァ」
そばに置いていた扇風機にむかって声を出して遊ぶ人魚。
「こら、そんなことしない」
「あはは!なにこれ??おもしろい!!」
人魚は、はしゃいでる。
「それは扇風機だ。プロペラを、回して風を送ってくれる。人間には夏に必須な家具だ」
「すごい……ぐるぐるまわってかぜさんをよんでくれてる。かみさま?かぜをおこせるかみさま??」
人魚は扇風機に興味津々なようだ。
「いいから、大人しく座ってなさい」
「おっ」
僕は人魚を持ち上げて目の前に座らせた。僕はドライヤーを手に取った。
「これで髪の毛を乾かすぞー」
「なに?それ?」
「これは、ドライヤーって言うものだ。暖かい風を送って髪の毛を乾かしてくれるんだ」
「どらいやー…」
僕はスイッチを入れた。暖かい風が轟音とともに出てくる。
人魚はビクッとした。僕がドライヤーを近づけようとしたその時、僕の方をうるうるした目をする。
「こわい、こわいよ」
僕の服の裾を掴んでいた。相当怖いらしい。そりゃそうだ、こんな音がでる機械、初めて見たら誰だって怖い。
僕はドライヤーの電源を切った。
「安心していいぞ。これは危険じゃない。大丈夫だから」
僕は微笑んだ。そしてドライヤーの電源を入れて風を自分に当てた。
「ほら!こうやってドライヤーは使うんだ」
僕は実演を人魚の前でして安心させた。そして、電源を切る。
「うわー!かみのけがなんかボバってなってる!あははは!!」
人魚は僕を見て笑った。髪の毛が乾いたままドライヤーを当てたら髪の毛が反り立ってしまった。
「よし、これで安心だろ?」
「うん!」
「じゃあ、前向いて座ってー」
「わかった!」
人魚はまた前を向いた。静かに座っている。
もう一度スイッチを入れた。そして、丁寧に風を当てていく。
長い髪を乾かすのやはり難しい。僕は風を送って人魚の髪の毛を靡かせる。
髪の毛のツヤはやはりすごかった。体も白く、透き通る様な柔い肌はやはり少し人間とは違うのを物語っていた。まるで、天から舞い降りた神様のような、天女のような感じがした。
「はい、終わり」
僕はドライヤーの電源を切った。人魚はゆっくりと振り返り、真面目な口調で言った。
「……それはおんぷうをだせるかみさま??」
「違うよ」
僕は速攻で否定した。
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