005.看病って大変

 ゼリーを完食して元気が戻ったかと思ったが、やはり熱は下がらなかった。おでこの熱さはさらに増していき、人魚はベッドに横になっていた。


「うーん……、、」


 人魚は苦しそうにうめき声をあげた。汗もすごくかいている。顔も赤い。


「あたま、いたい」


「頭痛は体の免疫が病原体と戦っている証拠だ。がんばれ」


「ちょっと、なにいってるのか、わかんない」


「あぁ、ごめんごめん」


 僕はおでこにのせていたタオルをとった。タオルはぬるくなっていた。


 ベッドを見ると、シーツには砂がついていたり鱗が剥がれ落ちたりしていた。汗でぐっしょりにもなっているので、どうしても新しいシーツに取り替えたい。


「砂がすごいし、汗もかいてるからシャワー浴びようか」


「しゃわー……?」


「そうだ。人間はシャワーを浴びて1日の汚れを落とすんだ。体が綺麗になったらスッキリしたーってなるんだ」


「しゃわー、すっきり、……したい!!」


「よし」


 僕は立ち上がって、小さくなった人魚を持ち上げた。


 僕は驚愕した。


「あれ?尻尾は!!?」


 そう、尻尾が無くなり本当の人間の脚があった。これはいったい?


「あぁ、いまはギタイになってるから。そのほうがいいとおもって。


 すこしのあいだしかなっていられないから、はやくして……」


「そうか、そんなことができるのか。分かった。シャワーを浴びにいこう」


 僕は人魚を担いだままシャワー室まで歩いていく。服を脱がせ、扉を閉めた。


 僕は服の袖をまくり上げた。


「よし、それじゃあシャワーを浴びよう」


 目の前に人魚を座らせる。レバーを引いて、シャワーからぬるめのお湯を出す。


「ヒヤッ!!」


「あぁ、ごめん。最初のほうは冷たいけど、すぐぬくい水がでるから」


「……おみず、たくさんでてる。すごいすごい」


 人魚はまた目をキラキラさせていた。そうか、シャワーも初めてか。


 水がぬるくなると、人魚にかけた。


「フワ〜」


 立ち上がる湯気と一緒に人魚の声もフワフワと上に登る。僕は微笑みながら体全体に水をかけていく。砂が流れていくのが見えた。


「きもちい〜」


 人魚は目を瞑っていた。僕はもう片方の手で人魚の体を撫でながら砂を落としていく。


 普段からシャンプーとかボディソープとか使っていないだろう。なのに今使ったら体にどんな影響があるか分からない。だから水だけ流して終えた。


「よし、終わりだ」


 僕はまた人魚を担いだ。そして、風呂場の扉の前に人魚を立たせた。

 

 風呂場を出てすぐ横にある引き出しからタオルを取り出し、人魚の体の水を拭いていく。


「あ〜あ〜あ〜」


 頭を拭いている時、人魚は揺らすたびにこんな声を出していた。


 あっ、下着が無い…。どうしよう。男子高校生で一人暮らしの僕に女性の下着なんてあるわけない。まぁ、いいか。すぐに尻尾にもどるだろう。


 僕はまた人魚を担いで部屋に戻り、服を着させて、鏡の前に連れていった。

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