002.初めての患者は人魚さん

 本当にいたんだ、人魚。すごい、初めて見た……。




 おっと、落ち着け医者の卵。人魚は確かにすごいが、関心している場合じゃない。




 目の前に倒れている人がいる。そんな時に何もできない奴が憧れの医者になんてなれない。ここは冷静に対処するんだ。




 僕は辺りを見回した。周りは特に危険なものは無いな。




 僕は座って人魚の肩を揺すった。




「大丈夫ですか?大丈夫ですか??」




 徐々に声を大きくしていき、反応があるか見る。




 ……ダメだ。気を失っているようだ。




 僕は手を人魚の口元にかざした。空気が手のひらをゆっくり伝う感覚がある。




 つまり、息はある。




 首を押さえても、脈は確認できた。よかった、生きてる。




 ……人間と一緒なんだな、体のつくりは。




 おでこに手を当てると、熱かった。熱があるようだ。




 とりあえず、運ぼう。家はすぐそこだ。




 僕は人魚を担いで、家まで走った。




 僕はベッドに人魚を寝かした。


 砂をだいたい外で払っておいてよかった。裸ではいけないから、服をとりあえず着させた。




 体の状態を見るに、骨を折っている箇所があった。僕は定規を持ってきて、包帯を巻き、固定した。




 本当は病院に連れていきたいところだが、人魚がいるなんてバレたら世界を揺るがす大ニュースだ。最悪の場合、この人魚は研究に使われてしまうかもしれない。




 冷たい水を少し含ませて絞ったタオルを、たたんでおでこに置いた。




 僕は、人魚にある変化が起こっていることに気づいた。




 体が小さくなっていることだ。さっきまでは僕と同級生くらいの見た目だったが、今は小学生の高学年くらいになっている。




 どういうことだ??




 とりあえず、ここで看病しよう。僕はそう決めた。

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