第12話:変えられない過去 ⑪
翌朝、彼は朝起きてある事に気が付いた。
それは彼が受験に行くときに持っていったバックから学校に行くバックに必要な荷物を入れ替えて、急いで上着を持って、自転車に乗ろうとしたときだった。
“あれ?自転車の鍵と体育のジャージがない。”
彼は焦って、バックを探し始めたがどこにも入っておらず、部屋に戻るとジャージが入っているバックは見つかったが、自転車の鍵はどこにもなかった。
そこで車の鍵などがかかっている鍵付きのケースにある自分の自転車のスペアキーを取って行こうとしたが、ここの鍵は両親が1本ずつ持っているため、2人が仕事に行ってしまうと開けられないのだ。
急いでリビングに走っていくと母親がちょうど車の霜を取るためにエンジンをかけて、ガラスの霜が溶けるのを待っている所だった。
彼は母親に「僕の自転車の鍵知らない?」と聞くと母親は「鍵は知らないわよ。あなた駅まで自転車で行ったときどうしたのよ」と聞かれたので、「あのチャリは駅前の有料駐輪場に置いて受験に行ったよ。」というと「まさか、受験に行った時のカバンに入れたままじゃないの?」と母親に問いただされ、受験の時のカバンを探すと普段プライベートで使っている自転車の鍵は見つかったが、通学用の自転車の鍵は入っていなかった。
彼は仕方なく、弟が春から使う通学用の自転車を借りて、学校に行った。
すると、学校の自転車置き場で「あの・・・昨日受験されていましたよね?」と隣のクラスの小向さんが声をかけてきた。
小向さんは同じ塾の進学クラスに通っていたのだが、賢治はアドバンスクラスで小向さんはエキスパートクラスだったため、直接会話はしたことがなかったが、友人を介して話題に上がることはあったため、どのような人かは知っていた。
彼が小向さんの方を振り向くと身に覚えのあるものを持っていた。
小向さんは「実は昨日これを駅で拾ったのだけど身に覚えはないですか?」と賢治に聞くと「何だろう?ちょっと分からないかな。」と答えると小向さんはある部分を指さした。
彼がそこに目をやると、彼が小学生の時に修学旅行で行った沖縄で買ったキーホルダーに“賢治 通学自転車”というタグタイプのキーホルダーが付いていた。
彼は「これどこに落ちていたの?」と聞くと、小向さんも「2番線のホームに落ちていたよ」というのだ。
彼は「ありがとう!これ探していた鍵だと思う。」と彼女に言って教室に走った。
その日の下校の時だった。
彼が家に帰るために通学路を自転車で走っていると、家の方向に向かってパトカーが走っていき、少し遅れて救急車と化学消防車が走っていった。
彼は最初「家の近くで車同士の事故でもあったのだろう。」と思っていたが、そのまま走っていると警察官の人が家に入る交差点で交通誘導していた。
この時、友人の敬太朗は賢治に「賢治は家帰れるのか?」と聞いた。
すると、賢治は「大丈夫でしょ。」と言って直進すると、誘導していた警察官の人から「すみません。この先事故で通行止めなので、迂回をお願いできますか?」と言われた。
彼は「家がその交差点から左に行ったところなのですが、どこが通れますか?」と聞くと警察官の方が「実はその通り全て通行止めなので、通行止め解除までご友人宅等でお待ちいただけますか?」と言われたため、敬太朗の家で待つことにしたが、彼はどこか落ち着かなかった。
その理由として彼の家は通行止めになっている道路から離れていないため、救急車のサイレンがひっきりなしに鳴っていて、目の前が渋滞している光景を見たことで“大きな事故だったのだろうな”と思ってしまったのだ。
3時間後、仕事から帰ってきた母親が迎えに来たが、自転車を健太朗の家に自転車を置いていくわけにもいかず、2人揃って頭を抱えていた。
さらに30分が経ったときに事故現場につながる道路の通行止めが一部解除され、家の前の車が動き出した。
賢治と母親は「今なら自転車でも帰れるかもしれない」と賢治が自転車、母親が車に乗り込み、健太朗の家を出ようとしたときだった。
通行止めになっている通りからパトカーに乗っている警察官が“現在、この先の交差点は右折のみとなっています。左折される車両は左側のレーンに車線変更し、解除までお待ちください。”というアナウンスをしていた。
このアナウンスを聞いて、2人は家に連絡し、帰るのが遅くなることを伝えようと連絡すると「今から○○病院行くから、そのまま向かって」と祖母から言われたのだ。
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