第9話:変えられない過去 ⑧
そのため、受験番号は筆記試験を受験する人だけでなく、筆記試験が免除になっている受験生にも振り分けられていて、試験会場に座っている人数が少なかったのだ。
そして、午後の筆記試験が終わり、面接の会場に向かうときだった。
彼は受験番号の書かれている受験票を持って、面接会場の入り口で自分の番号の受験時間を確認した。
すると、彼の受験時間は“14:00から14:30”だったのだが、彼は集団面接ではなく、個人面接になっていたため、受付で聞いてみると、一緒に受験する予定の受験生が体調不良で来られなくなったため、彼一人で面接を受けることになったのだ。
実は彼はこれまで集団面接の経験はあるが、個人面接は幼稚園に入るときの3次試験で体験して以降、検定試験などでは体験したことがあるが、受験に関しては1度も経験した事がないのだ。
なぜなら、彼が今通っている学校は幼稚園から中学校までが一貫教育になっているため、幼稚園から小学校、小学校から中学校に入学する際の試験は公立の幼稚園や小学校から受験する人しか受けない。
そのため、幼稚園で受験をして以降、エスカレーター方式で中学校まで過ごしてきたため、高校を受験するまで面接をする機会がなかったのだ。
控え室では彼の前の時間に面接を受ける5人の受験生がいた。
3人はこの辺では有名な進学校の制服、2人は見たことがない制服だった。(その後、調べてみると隣の区にある公立中学校の制服だった)
そして、面接の開始時間になり、グループ1から順番に面接室に入っていった。
面接自体は15分で終わるのだが、15分は“チャット・インタビュー”と言われている1人3分程度でその場で与えられた課題を自らの意見を用いて説明し、受け答えをするという課題がある。
これはこれまでの受験をしてきた先輩も“チャット・インタビューをクリアできると後の試験がかなり楽になる”と言っているほどかなり難しいテーマが出てくる可能性が高いのだ。
過去に出てきたテーマを事前に学校で先生と取り組んできたが、面接では50点中45点取れることが多いのだが、チャット・インタビューは毎回50点中20点程度しか取れないという彼の弱点でもあった。
特に3年前に出た“日本の自給自足を80%以上にするためにはどのような政策をどのような支援で実行する事が望ましいのか”や“現在のGDPを7%上げるためにはどのような経済支援や企業においてどのような労働環境の整備が求められるか”など日本経済に関する問題と“あなたが内閣政務官に指名されました。あなたが大臣などに提案したい政策や法律は何ですか?”や“あなたが厚生労働大臣になりました。あなたはどのように与えられた課題に取り組みますか?”などの官僚就任を前提とした問題など高校の受験とは思えないほど難しいテーマも多く、事前にテーマを含めた問題を知らされることはないため、知識力や教養力が求められる事を前提に練習問題を取り組んできたが、それでも超えられた人は3人に1人程度で、この年の合格者は受験人数の3割程度しか通常合格で合格できず、他の7割程度は小論文の成績で決まるという波乱になっていたこともあった。
彼は昨年の合格率を少し前に見たが、“通常合格:26.5%・追加合格:26.5%・不合格47%”という3年前と似た状況になっていた。
この時、彼はある事を思い出した。
それは今年の経済学専攻コースのチャット・インタビュー問題はそんなに難しくないのではないか?という教科担当の先生の話と塾の経済の先生が言っていたことだった。
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