第7話:変えられない過去 ⑥

 その後、彼女と話をしていると“今日私も受験なの”と言っていた。


 その言葉を聞いた賢治は“どこを受けるの?”と聞くと“大園女子高等学校の普通特進コースだよ”と彼女から返ってきた。


 彼は思わず開いた口が塞がらなかった。


 なぜなら、大園女子高等学校は関西では“桜花”・“シャーロット国際”と並ぶ女子校御三家と言われており、偏差値も70以上と近隣の高校に比べるとかなり高く、彼女が受験しようとしている普通特進コースは定員が30名で、毎年は10倍の合格倍率だったこともあり、“難関校”の異名を持つ学校だ。


そして、合格した生徒は1年次の成績で2年次以降の学費が免除になることや特定校進学優遇制度を利用できる権利を与えられるなど自分の努力次第で将来の選択肢が増えていく事で有名な学校だった。


 一方で大園女子に関する真偽不明の情報が受験生の間で出てきており、その情報に対する疑問や疑念を払拭する事が求められる部分や在校生のいじめなど内部イメージの悪化につながっていく重大な問題に繋がっていく事で入学者の減少につながる可能性がある。


 そのうえ、ここ数年はいじめなどの重大生徒指導の発生が2件程度で推移しており、この数字から見ても校内に特段の問題が発生しているようには見えてこなかった。


 しかし、噂の中には“入学して半年で成績不振を理由に普通コースに転籍された”や“模試の成績が悪かったため、次回の模試の受験を見合わせるように通知された”など自らのブランドを維持するために成績の悪い生徒に対して“ブラハラ”(=ブランド・ハラスメント)や“ランハラ”(=ランク・ハラスメント)などを行い、先生が生徒に対して精神的に追い込んでしまうという事例があとを絶たなかった。


 ただ、これらの事情の正偽もはっきりしておらず、受験生にとってはどのように判断することが求められるかを理解する事はかなり難しかった。


 そして、仮にこの事情が正しい情報だった場合にはこれらの情報に対してきちんと対応し、重大事態を改善する姿勢を受験生に対して見せることが必要になるのだが、学校側も真偽が分からないことから学校側が把握している情報や報告を確認するために生徒指導部長や当該学年の担任などが学校に報告があるいじめやトラブルなどの事例を校長へ報告し、その事例と受験生の間で噂されている事例の照合や指導状況の確認に追われていた。


ただ、この話が受験生や受験予定の子どもたちの耳に入ることになり、今後の入学希望者の減少も考えられる事態になっていた。

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