第5話:変えられない過去 ③-1
本年度は15歳から22歳までの男女各3名ずつ計6名が議会に参加し、ヤングアドバイザーと共に議論に参加することになっていた。
しかし、不安要素として“採用した学生には将来的には議員になって欲しい”という市長の希望があり、学生側としては“議員前提なら応募しない”という状況が毎年発生しており、市長としても若い力が地元に定着して欲しいという願いや“ヤングプロジェクト”という若い世代に提案してもらい、その提案を実行して市を引っ張ってもらうという市を上げたプロジェクトがあり、このプロジェクトをより良くするためのメンバー選考の意味合いもあったため、このような意見が出てきたことで心理的に不安定になってしまったのだろう。
そのうえ、このプロジェクトも場合によっては近隣の自治体と連携する形で運営しなくてはいけない可能性も現時点では残されており、市長としても頭を抱えているマニフェストの1つであり、これが地域の過疎化を防ぐ手段として認められたからこそ“結果”が求められる状況になったのだろう。
2週間後、1回目の応募期限を迎え、応募してきた人の書類がどのくらいあるのかを総務課に確認したところ2名の応募があったのだが、2人とも他の自治体と併願していると分かり、この市が第一希望ではなく、第三希望ということで受験するかも不透明だというのだ。
この話を聞いた賢三郎が「うちの市でもこのプロジェクトを立ち上げよう」と区議会議員に提案をしたのだが、過疎化が急激に進んでいることや若い世代の居住率が35%と少ないため、果たして区の予算を組んでまで実行する必要があるのかという疑問をそれぞれが持っていた。
しかも、今年度末には新大学1年生になる子どもたちの8割が県外へ、1割が海外へそれぞれ転出することになっているため、このプロジェクトが成り立たなくなる可能性もある。
また、これまで近くに住んでいた議員の息子さんや娘さんも徐々に都会へと引っ越していき、都会の生活を満喫しているという状態になっているため、ミドルリーダーと言われる30代後半から40代前半までの若い世代で自治会等に入っている人も減少するというなんとも言えない状態なのだ。
そんな時、彼はある事を思い出した。
それは今から30年ほど前のことだった。
当時賢治は近くにあった中学校の3年生で“成績優秀”であり“学年上位”という当時の担任の先生だった亀田先生にとっては誇りに思える生徒だった。
しかし、当時は校内で不純異性交際や無断外泊、援助交際といった校則違反や非行事実で補導される生徒が多く、生徒指導が毎日のように行われていた。
この事を含めて校長先生も子どもたちの荒れ方に頭を抱えていて、当時の区教育委員会の委員長は文部科学省からの天下りで、ちょっとでも問題がある学校には間髪入れずに視察に来るなど子どもたちをきちんと指導できない先生をどんどん処分することで有名な教育長だった。
そのため、あまり学校全体が荒れてしまうと自分の首が飛んでしまう可能性や担任などに対して“指導力不足”という評価をされることで人事異動をさせる際に他校から印象が悪くなる可能性があるなど先生たちのキャリアにも傷が付く可能性があり、人事異動で異動した先生の後任として着任する先生も見つからないという状況になることがとても恐かった。
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