第11話 まだ切られてない。大丈夫。
本当に良く切れそうな剣を向けられている俺。さて、この後どうなるか。そんなことを考えているといろいろ目立つ女性が話しだした。
「お前はこの町の者ではない。それに他の地方の冒険者でもないだろう。身分証を持っていないとみた。持っているならすぐに出せ。まあないだろうがな」
ない事確定かよ。って、まあないけどさ。俺何も持ってないし。見たらわかるだろうが。無理矢理体内にでも何か隠し持っている――ってこともないからな。って、このいろいろ目立つ女性。俺の状況をわかって聞いてきてないか?それと今の会話から――。
「——冒険者?ってこと、ここはそういうところなのか?」
俺自身は今の女性の言葉で何となく現状がわかって来た。多分ここは俺が居た現実世界ではないことがここではっきりと確定し。一応死後の世界という可能性もまだ残っているが――でもとにかく。現実では……あー、でも冒険者か。現実にも居るかもしれないけどさ。そういうまだ知られてない土地があるのかもしれない。って、言葉が通じている時点で、日本にそんな未開の土地とかないと思うが。ないよな?まさか――ある?って、さすがにないよな。この世界は現実ではない。そう理解しておこう。それに、周りの景色。雰囲気も現実とは全く違うからな。
「……なんだ。知らないところからいきなり飛ばされたとかいうのか?」
俺がつぶやきつつ。いろいろ考えていると、ちょっと馬鹿にする感じで女性が聞いてきたが――やはりこのいろいろ目立つ女性。俺の事わかっている気がする。普通なら「怪しい奴め」とかで、既に切られていてもいい気がするし。でもまあここは素直に認めておいた方がトラブルはないだろう。
「まあ、その通りなんだが――さっき目が覚めたらこの町の近くだった」
「……なんだ。それなら早く言え。最近は頻度が高いな」
するとあっさり顔の前にあった剣が下ろされ、剣は女性の腰へと戻った。
いやいや、信じるのかよ。信じちゃダメだろ。警備が甘すぎるだろ。いいのか?こんなあっさりで。あまりにあっさり信じられたので、ちょっと戸惑ってしまった。
「——理解が早いのは助かるが。あっさりすぎないか?もっと怪しむべきところな気がするが……」
「なんだ?別に刺し殺してもいいんだが?怪しい者を切る。それは普通のこと、証人は周りにいる。見た感じお前一撃で死ぬぞ?」
俺はいろいろ目立つ女性にそう言われて改めて周りをみると……いつの間にか先ほど以上に周りから見られていた。この町の人からは完全に敵を見る目でみんな俺を見ていた、中には武器の準備をしているものもいた。剣を持っている物。杖を持つ者。盾を構えている者。いやいや周りは周りで突然警戒しすぎだからな。俺マジでボロ布だけだから。盾で潰されても死ぬと思うから。そこに魔法とかでも攻撃あります言われたら俺瞬殺で負けるから。
「……わかった。とりあえず怪しいものではない。さっきも言ったが目が覚めたらこの近くにいた。以上だ。にしても――周りもおっかねー」
「明らかに怪しい奴が居たら殺す。それは普通の事だ。まあとりあえずお前。私に付いて来い」
「……?」
俺が返事に困っていると、いろいろ目立つ女性は歩き出した。
いやいや、ホントさらっと俺の事を認めたというか。いきなり――という事を信じたのか?こっちの方がびっくりで行動できなかったよ。ちなみに一瞬あった敵意は今のところ全く感じなくなっていた。むしろ突然ここにやって来たと言った俺に背中を向けている。身体検査などはしてないのでもし俺が何か持っていたら――って、さすがにボロ布だけだからそこまで必要なかったのか。
とりあえずなんか周りの人からの方が未だに殺意があったので、俺はいろいろ目立つ女性にすぐに付いていった。あのまま立っていたらボコボコにされそうだったからな。下手したら即死だろうからな。
何度でも言ってやるよ。見ろ。この俺のみずほらしい姿をである。
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