第13話 新たな友人
女の子を助け出して歩き始めてから数分後、私は友香との間に挟まれながら歩く女の子の姿を改めて見つめた。
パッと見た時は地味目な服装だと思ったけど、その子はブラウンのブラウスと白いフレアスカートを着こなして被っているキャスケットからは少しだけ銀色の髪が覗いており、よく見ないと気付けないくらいに自然な感じに化粧もしていた事から、あまり周囲から声をかけられたくなかっただけで、本当はもう少し人目を引くようなファッションも出来るのだろうと感じた。
これならあんな風にナンパをしてくる奴もいてもおかしくはないとその子を見ながら思っていると、前を歩いている梨野は歩きながらゆっくりと振り返った。
「そういえば、なんとなく俺達と同い年っぽく感じるけど、お前っていくつなんだ?」
「じ、16で高校二年生です……まだ誕生日が来てないので……」
「高二か。やっぱり俺達と同じだったな」
「皆さんもそうなんですか?」
「うん。あ、自己紹介がまだだったよね。私は有原真澄、よろしくね」
「私は正親友香、真澄の幼馴染みで親友だよ」
「俺は小佐田智也、真澄と友香とは幼馴染みで親友だ。よろしくな」
「それで、俺は梨野久寿弥だ。こいつらとは先月会ったばかりだけど、色々話せる大切なダチだ」
「……私は
拝戸さんがボソボソと喋っていると、梨野はそれを聞いて軽く腕を組んだ。
「その時にナンパに捕まるなんて本当に災難だったな。なんか本当にセンスも常識も無さそうな奴らだったし、あのまま連れてかれてたら何されてたかわかんないよな」
「そうだな。さっきは退散してったけど、まだ狙ってくる可能性は十分にあるし、少なくとも今日のところは気を付けた方が良さそうだ。もちろん、真澄と友香もな。帰りはしっかり俺が送ってくけどさ」
「うん、ありがとう」
「ありがとう、智也」
「どういたしまして。梨野もたとえ絡まれても反撃はせずにとりあえず逃げるんだぞ?」
「ああ、わかってる。あれくらいなら一人でも大丈夫そうだけど、いらない怪我なんかしてお前達に心配されたり怒られたりする方が嫌だからな」
梨野がニッと笑いながら言うと、それを聞いていた拝戸さんは驚いたような顔で私達を見回す。
「……皆さん、仲が良いんですね。有原さん達は幼馴染みと言っていましたけど、梨野さんは先月会ったばかりなのにここまで馴染んでるなんて……」
「梨野の場合はあまり遠慮がないだけだよ。何かにつけて私に惚れたかどうか聞いてくるし」
「真澄を俺の女にするのは決定事項だからな。そのためなら努力も惜しまないし、どんな奴が競争相手でも負ける気はない。それくらい真澄を俺の女にしたいと思ってるからな」
「はいはい。でも、さっきの梨野は少しだけカッコよく見えたかな。悔しいけど」
「お、本当か! それならそのまま俺に──」
「惚れない。まったく……ちょっと褒めたらこれなんだから」
嬉しそうな梨野に対してため息をつき、友香と智也がクスクスと笑っていると、拝戸さんはそんな私達の事を見て少しだけ寂しそうな顔をした。
「良いなぁ……」
「え?」
「あ、いえ……私、あまり友達がいないので羨ましいなと思ったんです。友達も今日会う子くらいしかいないので、そんな風に軽口を叩きあえるような友達がいたらなと……」
「そうだったんだ……」
「ふーん……それなら、俺達がダチになれば良いんじゃねぇか?」
「え?」
「だって、もうこうやって一緒に話してる時点で俺達って仲良くはなってるし、だったらこのままダチになっても良いだろ?」
「いや、どんな理論なの……」
そうは言ったけど、正直な事を言えば、私も梨野の意見には賛成で、友香と智也も賛成している顔をしていた。
梨野もそれに気付いたようで二人に対してニッと笑った後、そのまま拝戸さんに視線を向けた。
「拝戸はどうだ? お前さえよかったら、俺達とダチになってくれ」
「皆さんと……でも、本当に良いんですか?」
「良いから言ってるんだよ。それに、拝戸ってなんだか話してて楽しそうな奴だと思うし、ダチになってくれたらすごく嬉しいんだ」
「梨野さん……」
微笑む梨野を見つめる拝戸さんの頬はほんのり赤くなっており、それを見た友香はニヤニヤと笑い始めた。
「おやおや、梨野君や。好きな人がいるのに、他の異性を落とすつもりですかな?」
「私としてはそのまま他の人とくっついてほしいけどね」
「いや、俺は真澄一筋だからな。それに、別に他の女を落とす気なんてない。真澄以外の奴を俺の女にする気もないし、二人以上の女と付き合える程の甲斐性は俺にはない!」
「それ、自慢する事じゃないから。なんだかごめんね、拝戸さん。梨野がうるさくて」
「いえ、良いんです。あの……お友達の件、私からもお願いします。皆さんみたいな人と関わる事もあまりなかったですし、なんだか皆さんと一緒だと楽しそうだと思えたんです」
「そっか。それなら私も拝戸さんとはこれからも仲良くしたいな」
「私も!」
「もちろん、俺も。拝戸さん、これからよろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
ニコニコと笑う拝戸さんはとても嬉しそうで、目が悪いからメガネをかけているのかもしれないけど、メガネとマスクのその奥にある素顔もとっても可愛らしいんだろうなと思った。
そして拝戸さんの友達のところへ行くためにまた歩き始めようとしたその時だった。
「詩雨!」
突然拝戸さんの名前を呼ぶ声が聞こえ、私達はそちらに視線を向けた。すると、そこには青いデニムのジャケットにブラウンのスカートを合わせて首にスカーフを巻いた同じくメガネをかけている黒い短髪の女の子が立っていた。
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