第22話『流浪からの贈り物』
「おい、リョウマ。その話、本当なのか?」
「ピッシーっていう骨鬼族の男から聞いた。これが証拠だ」
スセリは自分の店の休憩室で、ムツにピッシーのあばら骨を見せ付けた。
「・・・大変だ・・・深刻な国際問題になるぞ。もしこんなことが公になったら、ただでさえ嫌われてるサラバナは、本当に世界共通の敵国になっちまうよ」
「そんなこと、どうでもいい。あんな国、恨まれて、どこかに滅ぼされちまえばいいんだっ」
「リョウマ・・・」
「ムツ・・・人間は、本当に醜いな。ウチは今、心底頭にきちょるぜよ。この怒りを、どこにぶつけたらいいのか、もうわからんぐらいだっ」
「あたしもだよ。でも、全ての人間がそうじゃない。サラバナ人にも、良い人間はいるんだ。人間の可能性を信じなきゃ駄目だよ、リョウマ」
「・・・そうだな」
「極悪人とはいえ、あたし達は多数の人間、しかも祖国の人間殺しちまったんだ。ここに留まるのは色々不味いね。ほとぼりが冷めるまで、別のところにずらかろう」
「うむ・・・そうだな」
「二人とも。ボーンコレクター共を殺ったのはこの俺一人だ。お前達の罪は、俺が全て受け入れる。牢獄に入るのは、俺だけでいい。お前達は、目的を果たすことに集中しろ」
「ゼント・・・済まぬ」
「ゼントさん・・・」
「骨が増えたら・・一本くれてやるきに。一緒に罪を共有しよう」
スセリの不用意な発言に、ゼントは眉を吊り上げ、叱責する。
「馬鹿かお前は、カバンには入れるなっ形見として、お前だけが大事に持っておけっ」
「それもそうだな・・・まっことすまんぜよ」
「俺に謝ってどうするっいつかお前が大人になったら、この問題を解決に導けよ、お姫様」
「ああ、わかっちょる。ありがとう、ゼント」
三人が陰鬱な表情に陥っていたとき、流浪が店にやってきて、スセリが手に入れた剣を差し出してきた。
「おお、流浪のオッサン。ありがとな」
「かまわん。耐久力は無限。魔綬も5つ付けておいた。これなら、最低でも、500億で売れるはずだ。杖を使い、ラズルシャーチに向かうが良い」
「でも、ウチ、武の国の風景なんて、絵画でも観たことないし、思い浮かばんぜよ」
それを聞いた流浪が、額を出せ、とスセリに告げる。言われた通り、彼女は前髪を手で掻き上げる。そして流浪は彼女の額に右人差し指を当て、王都近郊の風景を頭の中に送り込んだ。
「おお、ここがラズルシャーチか」
「・・・余は、武の国には付いて行けん。お前達の力で頑張るがよい」
「おう。助かったぞ、流浪のオッサン」
流浪は少しだけ口角を上げると、達者でな、と言い残し、店を出て行った。
「あのオッサン、一体何者なんだろうな?」
「解らん」
スセリとムツは何も感じていなかったが、ゼントだけは、流浪に対し、異形の臭いを嗅ぎ取っていた。
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