第14話『魔力を封印する不思議な石』

 ドワーフ達は独立した国家を持たない。広大なるガレリア王国の領土の一部に自治区を設けてもらい、そこで生活している。里にはドワーフの他にもホビットや獣人族が住み着いている。今回の事件は、平和だった里に、後からやって来た猫科の獣人族達が起こした蛮行だった。   

 

 スセリより小さい赤い皮膚をした族長の家に戻ってきたスセリ達は、ドワーフの秘宝を彼に渡した。


「おお、これはまさしく我らドワーフの始祖、エンゲル様の心臓。我は死すとも心臓は朽ちずとはエンゲル様の言」

「よかったな。そんな大切なもの、もう盗まれたらいけんぞ」

「うむ。お前達、良い奴。確か街作りをしたいんだったな」

「そうだ。今、1000億ジェルと街を作ってくれる建築技術者を募集中ぜよ」

「ふむ・・・金は出せんが、大工なら、良い物をあげよう」


 そう言うと、族長は奥の宝物庫から茶色い小さな人形を持ってきて、スセリに差し出した。


「これは何だ?」

「ネンドール。家でも何でも作りたい物、作ってくれる。でも3年分の燃料が切れると、一切動かなくなる」

「ほお・・・こいつは念願どおりのもんだ。でも一体か・・・」


 悩むスセリに、ムツがカバンで増やせるんじゃないか? と助け舟を出す。それを聞いたスセリは、さっそくネンドールをカバンに入れたところ、確かに増殖の兆しが見られた。しかし、


「そのネンドールは霊具。増える数には限界がある。せいぜい200体といったところか」

 

 と流浪が髭を触りながら喜ぶスセリ達に冷や水をぶっかけた。


「200体!? そか、でも、これだけあれば充分だ。あとは土地を買うお金・・・これが一番の難関ぜよ」


 さっそくスセリはネンドールを取り出して起動し、現れた土人形にモナコ奇行録に書かれているカジノの機械を見せてみた。


「どうだ。おまんら、これ作れそうか?」

「作れます。ですが、動作させるには、大量のマナ、魔機械の部品、資材とお金が必要です」


 ネンドールの回答に、スセリは頭を抱えた。大量のマナなら世界樹の苗木を使えば工面できる。しかし魔機械の部品は賢者の国ジャスタールか、祖国であるサラバナ王国でないと入手できない。つまり、どちらにしても彼女は一度は祖国に戻らないといけなくなったのである。


「う~~ん・・・嫌だな。あれだけ大口叩いて家出たのに、結局祖国に戻る必要が出てきたぜよ・・・」

「厳しいな。ま、どっちにしても建国祭には戻らないといけないし、そのときにちょちょいと調達しておこうぜ。後はカバンで増やせばいいしさ」


 悩むスセリ達の話を聞いていた族長は、更に彼女に、最近ドワーフの一人が拾ってきた綺麗な小石を数個、見せ付けてきた。


「ん? なんじゃそれは」

「わからない。ここから300キロ離れたところにある海岸線の洞窟で、ドワーフ達が、拾ってきた。何でも持ち主の魔力を吸い取るらしい」

「魔力を吸い取るだって? そいつは危ないな。おい、リョウマ。そんなもの貰っても仕方ないよ」

「いや、ウチはもらえるもんは何でももらっていく。ひょっとしたら何かの役に立つかもしれないからな。後で少し鑑定してみよう」


 スセリは満面の笑みをみせ、族長から不思議な小石を二つ受け取り、リュックサックの中にしまった。石の方はアイテム扱いになり、とてつもない勢いで増えていった。その速度に、スセリも驚く。


「おお、この石、凄いぞ」

「ゴミだろうよ」

「いや、物は使いようじゃきにのう」


 こうして、スセリ達のドワーフの里での冒険は終わった。里を出るとき、彼女達は里の皆にもてなしを受け、ドワーフ産の武器や防具、魔道具を格安で仕入れ、一晩過ごした後、盛大な見送りを受けた。そして一同は里を去ってガレリア王都に馬車で戻る事にしたのであった。


 今度の目的は、ガレリア国王との謁見。土地購入の意思がある旨を伝えることである。

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