五日目 魔法の使い方
五日目、光真達はその日もジャージ姿でグラウンドに集まっていた。昨日は体調が悪そうだった光真もその日は元気そうであり、その様子にセンセイは満足そうに頷く。
「本日は皆さんの体調に問題なさそうですね。さて、明日からはそろそろここから出ての授業となりますが、その前に皆さんに魔法の使い方について教えておこうと思います」
「そういえば、俺達にも魔力はあるんだったからな。けど、魔法ってなんでも使えるわけじゃないよな?」
「はい。ですがその前に、どのように魔法の種類や扱い方についてお教えします。まず種類についてですが、大きく分けて種類は三つあります。相手にダメージを与える攻撃魔法、自分や相手の状態を変える変化魔法、そして傷や異常を回復させる回復魔法の三つです」
「攻撃魔法っていうのが炎や氷を飛ばしたりする奴で、相手を毒状態にしたり自分の力を高めたりするのが変化魔法、それで怪我や毒とかを治したりするのが回復魔法ってわけか」
「そういう事です。そして、使える魔法は適性がある物に限っており、適性外の魔法を使うにはそれ相応の代償を必要とします」
センセイの言葉に強佳は首を傾げる。
「代償?」
「はい。自身の中にある魔力に直接働きかけるのですが、適性外の魔法を使うという事は魔力自体をそれに適した物に変える事を意味します。なので、それが終わるまでの間、想像を絶する苦痛に耐えなくてはなりませんし、中にはその最中に気が触れてしまい、まともな生活すら送れなくなる者もいますよ」
「ひっ……!」
「それは本当に怖いな……」
「はい。ですので、私もあまりおすすめはしません。因みに、その魔力を宿した武具がある場合はその限りではなく、自分の魔力と通い合わせる事でその魔力を使用して魔法を使う事は可能です。対田さんと食満さんの武器がそれに該当しており、対田さんの長剣は吸収した魔法であればその後はいつでも使え、食満さんの杖ならばたとえ適性外の魔法でも自在に使う事が出来ますよ」
「男女一人ずついるなら安心ね。それで、私達の適性ってどんな感じなの?」
強佳の問いかけにセンセイは微笑みながら答える。
「まず対田さんですが、攻撃魔法ならばどれでも使えて回復魔法が少々、変化魔法は適性外となっています」
「それじゃあ俺は完全に前線に出て戦うタイプか。武器も接近戦向きで魔法も攻撃がメインなら、サポートはみんなに任せるのが良さそうだ」
「そうですね。次に一色さんですが、一色さんは回復魔法ならばどれでも使えて変化魔法は少々、攻撃魔法が適性外ですね」
「武器が中距離で回復がメインなら、前と後ろのサポートは任せて良さそうね」
「ま、前と後ろ……」
「……真言、あえて直接は言わないけど、そういう事じゃないわよ。センセイ、敦史と私の適性は?」
「猪狩さんは変化魔法ならばどれでも使えて攻撃魔法が少々、回復魔法に適性がなく、食満さんはどの魔法でも満遍なく使えますよ」
「敦史が遠距離から相手の陣形を崩す役割、私は敦史と一緒に遠距離から攻撃したりみんなのサポートをしたりになるのね。偶然揃った四人にしては、結構バランスが良いみたいだし、これなら助かるわね」
「だな。それでセンセイ、魔法はどうやって使えば良いんだ?」
光真からの問いかけにセンセイは頷きながら答える。
「はい。慣れてくれば意識せずとも使えますが、皆さんの場合はまずは自分の中の魔力に意識を向ける必要があります。それを繰り返していく事で、魔法を使うと思う時には自然と魔力に意識を向ける事が出来て、戦闘においても手間取る事が無くなりますよ」
「へえ……それじゃあ、ファンタジー物でたまに見る詠唱的なのは必要ないのね?」
「詠唱はあくまでも威力を十分に発揮するための物なので無くても大丈夫ですが、余裕があるならば唱えておいて損はないです。ただ、詠唱は途中で切れてしまうと効果が無くなってしまいますので、詠唱も込みで魔法を使うならば安全圏で行うのをおすすめしますよ」
「それじゃあ、強佳には基本的に詠唱込みで魔法は使ってもらうけど、俺達はその間の支援を全力でやらないといけないな。強佳、それでも大丈夫か?」
「大丈夫だけど……三人も余裕があったら詠唱は出来るようにしておいてよ? 私だけに任されてもどうしようもないし、時には私の杖を渡して魔法を使う事に専念してもらうからね?」
「ああ、もちろんだ。センセイ、それじゃあ今からは魔法を色々使えるように練習する時間になるのか?」
「その通りです。皆さんの練習中、寄宿舎や皆さん自身には魔法が当たっても効力を発揮しないようにしておきますが、本当の戦闘の際には十分に気をつけてくださいね?
威力や範囲を間違えた状態で皆さんに当たってしまうと、それが原因で即座に命を落とす事もありますから、少なくともそれだけは注意してください。わかりましたか?」
センセイは四人に問いかける。だが、センセイの目には感情がこもっていない上に声もどこか冷たく、四人はただ頷くしかなかった。
「よろしい。では早速練習を始めましょう」
その言葉で四人は相談を始め、センセイは四人の姿を何も言わずに見つめていた。
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