第34話 団結の戦士

ヒサ達が堕天使の工場に向かっている同じ時刻、如鬼とその兄である現人、そして授かれし戦士攻撃する度に強化されていくメタルフェニックス・ダークエンジェルとの闘いを続けていた。


『如鬼! 相手の再生能力は異常よ! 完全撃破するには連続攻撃で隙を与えないこと!』


光炎の指示に自分は1人ではないことを改めて自覚しつつ、弾切れになった〈サイコロプスハントプラス〉を白バイに収納し、振動型ブレード〈セイバー〉の強化版〈セイバープラス〉を右手に装着する。


「分かりました。連続攻撃ならこの武器です」


刃を激しく振動させ、突っ込んで行く。


「現人くん!」


「分かってる。ここで倒そう。この戦いで終わらせるんだ」


義妹の叫びに義兄は恐怖を振り切り、右手を拳に変え走り出す。


「無駄だ。俺は不死鳥、お前達ではどうすることもできない」


強者の風格をメタルフェニックス・ダークエンジェルは見せつける様に攻撃されたことによって強化された全身をまさに不死鳥の如き赤へと染め、超高速でタックルを繰り出した。


『相手の攻撃が来るよ!』


しかしスーの予測機能によって動きを読まれ、如鬼の〈セイバープラス〉のブレードが心臓部に突き刺さる。


「だから無駄だと言っている!」


「それはどうですかね?」


鉄の不死鳥は刺されている傷口を修復しようとするが、なぜかできない。

その理由を理解するのに時間はかからなかった。


「なるほど。お前の刃が震えているのはこのためか」


「察しがいいですね」


〈セイバープラス〉の超振動した刃を受けた体は再生をする前に破壊されて行く。

なんとか抜け出そうとするが、現人と授かれし戦士達によって取り押さえられる。


「このチャンス、絶対に物にするんだ!」


「逃したら倒すことはできないぞ!」


授かれし戦士達の作ってくれたこのチャンス、彼女は「皆さん、ありがとうございます!」と感謝しながらより深く突き刺す。


「強者であるあなたには分からないでしょう。人との繋がりは大切さを。自分も気づくのに時間がかかりました。私は1人じゃない!」


「語りは済んだか? 次はこちらから行くぞ」


勝利を確信している如鬼に対してファパーは口部分のキャノン砲を起動させ、闇のエネルギーを溜め込んでいく。

このままでは凄まじい破壊力のエネルギー弾を受け、彼女は死亡してしまう。


「お前に! 次は! ない!」


そこに現人がなんとコンバットナイフを銃口に突き刺し、首を後ろ側にへし折った。


「ヴァ……ヴァ……ガァ!?」


エネルギーを吐き出せず爆裂して行く不死鳥の体。

再生が間に合わず、大爆発に巻き込まれればひとたまりもない。


『如鬼! 早く〈セイバープラス〉を抜いてこの場から逃げるんだ!』


「夏華ちゃん! 皆さん! 爆発に巻き込まれる前に! 急ぐんだ!」


スーと現人の指示に従い如鬼は刃を引き抜き白バイへ急ぎ、授かれし戦士達は翼を羽ばたかせ上空へ急上昇する。


現人も軍用車両に乗り込み、その場から脱出する。


メタルフェニックス・ダークエンジェルの体はついに限界を迎え、大爆発を引き起こす。

白バイを走らせ逃走する彼女に、爆風が迫り来る。

その光景をドローンから観ていた光炎はズートレーラーの後ろハッチを開き、勝利した如鬼が帰って来るのを信じ待つ。


「如鬼! 絶対に戻って来て! これは命令よ!」


『分かりました。必ず遂行すいこうします』


待っている人のためアクセルを全開にし、爆風から一気に逃げ去る。


「敵の生命反応消失。やったわね!」


『これも皆さんの協力があってこそです。それではズートレーラーに戻ります』


「えぇ、お疲れ様」


これで超級堕天使はあと1人。

しかしそんなことすら知らない人間達。

戦いに備えることしかできない哀れな存在である。


ゼッツは〈ダークネスリングゾーン〉でファパーの死を確認し等々とうとう追い詰められたと自覚しつつ、新たなる計画を進行させていた。


4人分の部下を背負う重圧を跳ね除け、彼らに指示を出す。


「あなた達は良く戦い、理想ために頑張ってきました。戦争を無くすため、自然を取り戻すため、平等な世界を作るため、自分を強者だと認めさせるため。しかし私1人ではその願いも叶わない。ですので力を貸してください。必ずや人間を全滅させ、すべての目的を果たそうではありませんか!」


ゼッツの号令に堕天使達は拳を突き上げ、『オォォォォォ!!』と叫びを上げる。

だが一部の堕天使は納得していない様子だ。


「どうされました? そんな不安そうな顔をされて」


「私達は憎しみの戦士になったザーガにすら勝てていない。ファパー様も授かれし戦士の協力があったとは言え人間に倒されています。いくら団結だんけつしたところで勝てるわけがない」


部下の弱気な発言に彼女はゆっくりと近づき、優しく微笑む。


「安心してください。新たな計画が下界で着々ちゃくちゃくと進行います。あなた達には苦労をかけて申し訳ないと常々思っていますし、必ず成功させなければなりません。共に戦いましょう。この手で人間を滅ぼすのです」


「はっ、はい!」


部下の指揮しきを上げるのは重要のこと。

しかし1人で大人数を背負うことになるとは。

人間の戦闘力が思った以上に高く、実際に超級堕天使も倒されている。

その現実を受け止め、下界にいる堕天使達へ計画は順調か確認するのだった。

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