第33話 混沌の戦士

「神に従いし者が我々堕天使の力を扱うなど、やはりあってはならない。この手で倒す。この手で」


アームド・ダークエンジェルの1人がゴアドに対して拳を握り怒りを表すと、連続突きをビームソードで受け止める。

しかし〈カオスグリフォン〉を持っていた彼はさらに上空へ上昇していた。


「なに!?」


光と闇が混じり合い、混沌を生み出しながら両足から繰り出される必殺の一撃。


「ホオォォォォォォ!!」


〈ドラゴニックカオス〉が装甲を持つ堕天使の頭に命中した。


「もう1発、食らわせてやるか」


なんと頭を踏み台にし、高く飛び上がる。


「ホオォォォォォォォォォォォォ!!」


そして〈ドラゴニックカオス〉を2発目を食らわせ、全身に亀裂きれつを入れ爆散させた。


「おのれぇ! お前だけは絶対に許さん!」


残り1人となり、失った仲間の想いを胸に宿したアームド・ダークエンジェルはビームソードの持ち手を握り締め高速飛行で攻撃を仕掛けた。


一方でオリジンザーガは暴走するザーガに馬乗りになると、憎しみの戦士から解放するため面と向かっていた。


黒き複眼からは過去の自分を映したように見える。

かつて六問もこの状態になったことがあり、研究者のアレックスからは〈リベンジアイ〉と呼称された。


リベンジアイはザーガの腕輪が怒り、憎しみ、復讐心などに反応して発動する。

全身に破壊エネルギーを放出し、敵と判断した者を容赦なく倒す。

体力の消耗が激しく、さらに暴走状態のため体の自由が効かない。

すべて腕輪の有通りに動いてしまうのだ。


(ヒサくんの〈リベンジアイ〉を克服させるには更なる変身をしてもらう必要がある。そのためにもここで止めなければならない)


ザーガの新たなる変身。

〈ザ・ヒーロー〉を超える正義の姿、それに成らなければ憎しみの戦士と永遠に付き合うことになる。


「ヒサくん! ここを乗り越えなきゃ君は永遠に憎しみの戦士と戦うことになる。それでも良いのかい! 幕昰さんやZ3ズースリーの2人にもその拳を向けるのかい!」


説得を続ける中で漆黒の複眼が赤き複眼に変色していく。

複眼から涙を流しながらヒサは後悔に体をよじらせた。


「六問………さん………俺………俺………」


「いいんだよ。それよりもヒサくんには更なる高みを目指してもらう。憎しみの戦士に成らずともさらに強く成るためにね」


六問は優しい声で手厳しいことを言うと、立ち上がりながら最後のアームド・ダークエンジェルに視線を向ける。


「その前に敵を倒そう。特訓はその後だ」


「はい!」


堕天使に向けザーガはビームライフルを、オリジンザーガはロケットランチャーを生成する。

破壊エネルギーを武器に集中させ、狙いを定める。


「ゴアドさん!」 


ヒサの叫びに西前は振り向くと、再び堕天使の方を見つめバックステップから高く羽ばたき〈カオスグリフォン〉を投げつける。


「今更そんな物!」


槍をビームソードで力任せにはじかれるが、彼の予定通りに動いてくれた。


隙が生まれたところで混沌の力で〈ガンバロン〉を〈カオスバロン〉に強化し、コッキングレバーを引っ張る。


「「「フン!」」」


「しまっ………!?」


3人同時に放たれる必殺の一撃〈トライシューティング〉を食らい装甲が耐え切れるはずもなく「堕天使は必ず人間を滅ぼす。グワァァァァァァァァ!?」と叫びを上げながら爆散した。


その光景を見ていた幕昰が覆面パトカーから出てカギを占める。


「やったな! 3人共!」


相棒の声が聞こえたザーガの2人は変身を解除し、人の姿に戻り笑顔でサムズアップする。


「それにしても六問、どうして突然いなくなったんだ?」


「実はですね」


そう言ってスマホを取り出すと、とある画像を観せる。

そこにはアームド・ダークエンジェルが装着していたパワードスーツを量産化している工場の異質な存在があった。


「なんじゃこりゃ!?」


思わず声を上げる幕昰に、六問が説明に入る。


「おそらくさっきの堕天使達が守っていたパワードスーツの製造工場でしょう。電源は壊したので使い物にはならないとは思いますが」


その発言に西前はため息を吐き、戦っていたビル内に入ろうとする。


「あまいな。あいつらの科学力は日に日に高まっている。それぐらいのことじゃあすぐに修復されるぞ。もう1人のザーガ、案内してくれないか? その生けすかない工場を完全に破壊する」


右拳を左手の平に叩きつけ、神から引き受けた使命を全うする。


「分かった。ヒサくん、幕昰さん、一緒に来てくれないかな? もしかしたらまだ堕天使が潜んでいるかもしれない」


「もちろんだ。行くぞヒサ、必ずあいつらの野望を食い止めるぞ」


2人の正義の熱意にヒサは「これ以上の被害者を出すわけにはいかない」と決意を固める。


「そうですね。六問さん、案内お願いします」


「あぁ。俺について来てくれ」


こうして六問の案内でパワードスーツ量産工場に向かうことになった。

体力はギリギリ保つか。

それでも人間を脅かす存在がいる限り戦い続けるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る