第6話 決意の戦士

ズースリーの修理や如鬼の大ケガによる自宅休養が重なり、警察としては大損害を被った。


ズーシリーズの最新型が堕天使を名乗るイレギュラーな存在に敗北したことでブランドとしても評判としてもガタ落ちだ。


そんな中行きつけの焼肉チェーン店で食事をする光炎と鈴静。

タン塩を焼き始める彼女はため息を吐きながら仲間に視線を送る。


「鈴静さん、私はどうすれば良かったの?」


「どうすればって、あなたは間違ってはいませんよ。それにいざとなれば僕がズースリーを装着しますから」


彼は元々ズーシリーズの装着者であったが、最新型の試験に如鬼が合格した。


それから人生の歯車が狂い始めた。


やる事と言えば若僧の送り迎え。

今まで戦ってきたことがすべて抹消された様な感覚。

別に評価などどうでもいい。

これはプライドの問題だ。


「僕は元ズーツーの装着者。お願いです。如鬼さんがいない間、戦わせてください」


光炎も彼の実力は把握し、共に戦ってきた仲である。

焼けたタン塩をハシで皿に持っていき、その間に迫られる決断に決着をつけた。


「分かったわ。鈴静さん用にズースリーをチューニングするからよろしくね」


「えぇ、運転もやりますから任せてください」


これ以上光炎さんに恥をかかせない。

そのためにも責任を持って戦うことを決意するのだった。


一方その頃、六問と幕昰は剣を2本持った堕天使とビルのオフィスで交戦していた。


その姿は暗黒騎士その物、黒き鎧に身を包み霊魂がただよう。

左に持つは青き刃の剣、右手に持つは赤き刃の剣。

それぞれ発光しており殺された者の怨念が宿っている。


「我が名はデュエリスト・ダークエンジェル。戦いをめず、争いを繰り返す者達に死を」


掠れた声で堕天使は名乗ると、怨念が宿った11個の斬撃を繰り出す。


「デュエリスト、決闘者の名を持ちながら無差別に殺害するお前に、名乗る資格はない!」


すべての連撃をザーガはアルミで生成した障壁で防ぎ、再び体へ吸収する。

リーチの長い槍を鉄で生み出し一気に加速、相手の心臓部を貫かんとした。


だがバツの字に剣を構え紫色のバリアを展開、ぶつかり合った瞬間槍が砕け散る。


「無駄だ。お前の技量では我の結界を打ち砕くことはできない」


「確かにそうかもしれない。それでも」


戦っている相手がたとえ強敵だったとしても倒さなければならない。

それがザーガの腕輪を付けた者の運命である。


「無駄だと言ってい………」


デュエリスト・ダークエンジェルが剣を構え直していると、後ろから銃声が聞こえる。

銃弾が左腕に命中し、血液が流れ出す。

思わず怯みバリアを解除したその隙を突きザーガは顔面に拳を唸らせた。

大きく吹き飛ばされ、窓を突き破ると漆黒の翼を広げ、撃った相手を睨みつける。


「クッ………」


「決闘者さんよぉ。俺の事も忘れてもらっちゃー困るぜぇ」


リボルバーの引き鉄を弾いたのは六問の相棒、

幕昰だ。


光炎からもらったこの銃はズーワンの装備を改良した物で装着者じゃなくても使いこなせる様に反動を抑えつつ破壊力をそのままにした代物だ。


「奇襲とは言え深傷を負うとは、不覚」


風穴からドボドボと流れる血液、痛みに耐えながらこのままでは上の目的を果たせないことを察し逃走しようとする。


「あいつ逃げる気だ。追いかけるぞ」


「はっ、はい!」


幕昰に指示を受け六問は彼をお姫様抱っこし、堕天使を追いかける。

ビルを踏み台に距離を詰めていくと、こちらを見つめる男性の姿が見えた。


「あんたが怪人達を全滅させた英雄か、俺も共に戦わせてくれよ」


「???」


その発言に不思議と首を傾げる。

すると男性はジャケットの裾をめくり両腕の腕輪を前に突き出しながらクロス、神々しい光と共に姿を現したのは黄金の戦士『ゴアド』だった。


背中に竜の翼を生やし、ザーガと幕昰の元に降り立つ。


「あなたも、人を守るために?」


「あぁ、俺は神に選ばれた。使命と意思で今ここにいる」


一礼する六問にゴアドは縦に首を振ると、複眼でデュエリスト・ダークエンジェルを捉える。


「足を止めさせてすまない。だがその分の仕事はさせてもらう」


決意の表明をするため黄金の竜人が高く羽ばたき、堕天使を後ろから両手でハンマーの様にし頭から叩き落として見せる。

アスファルトに激突し痛みに耐えフラフラとしながら立ち上がると、剣を鞘から引き抜く。


「あくまで逃してはくれないか」


「そりゃそうだろう。堕天使は全員倒さなきゃ神の怒りは収まらないからなぁ」


戦闘体勢に入るゴアドは右の腕輪から黒き槍を召喚する。


「さぁ、いくぜ!」

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