第5話 憎しみの戦士
『如鬼! 無理はしないでって言ったでしょ!』
指示に従わなかった彼女を叱るも「無理などしていません。これがスキャンした結果ですので」と自分の責任ではないと主張する。
「こんな時に言い争いをしている場合じゃないでしょう」
「ザーガ、いない間にあそこまでの者がいることはお前にとって喜ばしいことだろう?」
バトルアックスとソードがぶつかり合い、火花が散る。
「あぁ、だが彼女はまだ若い。俺みたいに戦うだけの人生にはさせたくない。そのために!」
癒えない傷の痛みに耐えながら強者の出現から笑みを浮かべる堕天使、それに対して戦いの悲しさを口した六問は武器を強く握り締める。
お互いに刃を何回もぶつけ合うと、その間に如鬼が〈セイバー〉と〈アーチャー〉を構え直した。
バッテリー残量を気にしつつ、バットタウロス・ダークエンジェルへ刃を振りかぶりながら突っ込んで行く。
振動音でザーガが攻撃を一旦やめ左ステップしながら剣をリボルバーの形状に変化、ハンマーを後ろに下げる。
すると返り血を浴びていた
スーツから火花が散り始め、〈セイバー〉の振動が停止した。
「一体なにが?」
思わず後ろを振り向くザーガ、複眼に映る彼女の倒れた姿が死を過らせた。
「ハッハッハ! この堕天使がただ単純に動いていたと思っていたか! 吸血した血には人間の言う火薬が混じり合い、我が意志で爆裂させることができるのだ! フッハッハッハ!!」
高笑いを上げるバットタウロス・ダークエンジェルを視界に入れた途端、勇ましき戦士は赤き複眼が漆黒に染まり、憎しみの戦士へと意識が代わる。
「マズい! 如鬼がやられたのを見て六問が怒りに狂い始めた!」
「幕昰さん、それはどう言う?」
鈴静が飛ばしているドローンの映像から幕昰はあの黒き複眼に驚き叫ぶと光炎が不思議そうにこちらを見つめる。
「ザーガの腕輪には感情を理解し、強化や支援を行う機能がある。だが怒りの感情を爆発させた時、敵を倒すまで止まらない。まさしく暴君になるんだよ」
リボルバーを体に取り込み憎しみの戦士は口元をクラッシュオープン、堕天使に向かっていく。
唸る拳は右手で受け止められるも、あまりの破壊力に腕の骨へヒビが入った。
(この力………人間の創造物にこれほどまでの………)
怒りが腕輪によって力へと変化される度、感情的にそして過激になるザーガの攻撃の嵐。
全身に破壊のエネルギーが伝達され、それと代償に体力を段々と奪う。
しかしたとえ彼の意識が失われようとも腕輪が感情を感知する限り、機械人形の如く敵を倒すために動き続けるのだ。
「お前は! お前の様な悪魔は! この手で倒す!」
物凄い
大きく吹き飛ばされた堕天使は宙を舞いながら爆散した。
敵がいなくなったことを認識し、闇に染まっていた複眼が元の赤に戻った。
怒りに飲まれていたことを自覚し、後悔を募らせる。
「グッ………私は………私は………」
如鬼が敵の策略にハマった悔しさから放つ呻きを聞き、生きていたことにホッとし急いで駆け寄る。
「生きてて良かった。本当に。そうだ如鬼さん、悪いけどおんぶして帰るよ」
そう言いつつ倒れた彼女をおんぶすると
だが腕輪の力によって筋力が強化され、軽く感じる。
「降ろしてください………スーツを着脱すれば歩けますから………」
「あの攻撃を受けて歩ける訳ないだろ。それに自分の命を
彼女は死に急ぎ過ぎている。
そう感じた六問の忠告を、反論できずただ無言になるのだった。
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