第11話 これしかないと思ったから
『『『!?』』』
インカムから、息を呑む気配。
『何言って……!』
『黙って』
お藤さんにお願いする。
また、『彼女』に向かって話しかけた。
「アタシの身体を乗っ取っていいから、その人の身体を返して欲しいの。
出来る?」
『…………』
『彼女』は、逡巡したあと。
す……とアタシを指差した。
《お前の仲間を、今よりもっとビルの端にまで移動させろ》
途端、声が頭に響いた。
アタシの声とは違うもの。
だからたぶん、浅葱さんのとも違うだろう、低くこもった声だった。
《入れ替わりの邪魔を一切させるなさすれば、この身体を返そう》
アタシ以外には聞こえていないらしい声に、
「……わかった」
頷いてみせた。
「おい!」
「みんな!」
アタシは、お藤さんと青さんを見る。
二人とも、厳しい顔をしていた。
心配そうな、目をしていた。
「ビルの端に寄って。絶対に、入れ替わりを邪魔しないで」
「白!」
「白さん!」
いい人たちだな、と思う。
数時間という短い間ではあったけれど、彼女たちが善良であることはわかったから。
や、違う世界のとは言え『自分』に対して言うことではないかも知れないが。
でも、いい人だと思った。
「お前、何考えて……っ」
だから、ちょっと胸が痛んだ。
「いいんだ。だってアタシは」
きっと、今から言うことを聞いたら、彼女たちはあまりいい気持ちじゃないだろうなと察せられるから。
「十年前に、死んでるから」
苦笑しながら言ったのは、残念ながら真実だった。
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