第9話 いざ決戦地


 そうして、仲間を増やして屋上入口。

「……ここです」

 階段を上った先にある扉の前。

 ラスボスステージだというのに、何故か辺りに誰も居なかった。

 周りに守りを置かないとは、よほど自信があるのだろうか。

「ホントに敵に見付からずにここまで来られたね」

 青さんが感心したように言った。

 ときに非常階段、ときにエレベーター内部(カゴの中では無く、エレベーターが行き来しているあの空間)の梯子。

 そんな風に敵を避けながら上って来たら、吃驚するほど会敵しなかった。

「いやー、ありがとね。麦穂さん」

「いえ……」

 麦穂さん、というのが、彼の名前だった。

「──敵は、強大です」

 彼は、扉を見つめながら言った。

「特に遠隔から放たれる光球は、速さも威力も桁違けたちがいです」

 この扉をくぐり抜けた向こう側で、彼を待ち受けていたもの。

 それを思い出して、噛み締めるように、

「どうぞ、お気を付けて」

 彼は言った。

「りょーかい!」

 アタシが言って、二人も頷いた。


 ここまで来たらもう、やるっきゃない。



 ギギ……


 アタシは扉を少し開けると、

「せぇいッ!」

 気合入れも兼ねて、景気よくそいつを蹴り飛ばした。

「こそこそ来た意味」

 青さんが呆れた声で言った。

「まあどうせ敵も気付いているだろう」

 すらりと、お藤さんが刀を抜く。

「ならば、最初から全力あるのみ」

 屋上に飛び出した。

 屋上は、真ん中が吹き抜けになっており、その吹き抜けを囲むようにぐるりとスロープがある。

 そのスロープから一階分ほど下がったところにもスペースがあった。

 スロープにも、下のスペースにも、硝子や瓦礫が散乱している。

 それらはすべて、先の戦いの激しさを物語っていた。


 オオォォォオオォオオ……


 風の唸りとも、叫びともつかぬ声が聞こえる。

 吹き抜けのど真ん中に浮かぶ黒い靄から。

 恐らく、あれが魔王。

 靄の真ん中に、よく見ると人が居た。

 少女だ。

 黒い靄を服のようにまとった少女。

 その少女が、ゆっくりとこちらへ振り向いた。


「「「!」」」


 息を、飲む。

 靄と一体化した長い髪は、黒。

 こちらを見る虚ろな瞳も、黒。

 その顔は、


「アタシたちと同じ……!?」


 またも、見慣れた自分自身アタシたちの顔だった。

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