第4話
「は?」
聞き間違いか? いや、たしかにオレを殺すと言いやがったぞ、この男――
「なんなんだ、テメェは?」
「ボクは、ルディ。聖なる者の守護者にして、
「はぁ? 意味わかんねぇ。イカレてんだろ、オマエ」
「では、わからせてあげるよ、ラスティ。子供の頃、キミは、仲間たちと一緒に大きな金色のオオカミに出会ったろう?」
「……!?」
「おそらく記憶を消されて何も覚えていないんだろうけれど、キミと仲間たちは、その場の命乞いのために、人狼と契約を交わしてしまったんだ。みずからの魂を、
「人狼……あの金色のオオカミが?」
「そうだよ。忌まわしい魔界の
「オレたちの誰か1人が人狼になる? ……いや、待て待て、そいつは変だ。オレ以外の4人の仲間を食い殺したのは、その人狼っていうバケモノどもじゃないのか?」
「むろん、その通り。ご明察」
「いやいや、だったら、これから身内になろうって仲間をカタッパシから食い殺すってのは、どう考えても変だ」
「人狼に呪われた血を覚醒させるには、その呪われた人間を、人狼が噛み殺すしか方法がないんだよ、ラスティ」
「は? 殺しちまったら元も子もないんじゃねぇの?」
「そうでもない。人狼に呪われた人間は、人狼に噛まれることでいったん仮死状態に陥り、その直後に全身の血と細胞が魔獣のそれとして復活する」
「ってことは、オレ以外の4人はみんな……」
「呪われた血が覚醒するかどうか確かめるために、人狼が次々に噛み殺していったんだろうが、さいわいにも4人は呪われていなかったということだ」
「なにがサイワイなもんかよ! 当てずっぽうで見当違いに食い殺されて……」
真実を知ればなおさら、ハラがたって仕方なかった。
村を出てからはめっきり会う機会は減ったが、本当に気の合う大切な幼なじみだったんだ、みんな。楽しくていいヤツらだった。
それなのに……。
ルディは、しかし、優雅な美貌にサメきった表情を浮かべて、
「そう、たしかにね。人狼が真っ先にキミに噛みついていれば、ほかの4人が見当違いに食い殺される必要はなかった」
「それって、つまり……」
「そう、簡単な消去法だ。5人のうち生き残っているのはキミ1人。呪われし者はキミだよ、ラスティ」
「そんな!? このオレが人狼なんかに……」
「異形の人外になり果てるより、4人の幼なじみと同様に人として天に召されるほうがキミだってマシだろう? ねえ、ラスティ」
イヤミなくらいに優しくささやきながら、ルディは、黒い革手袋をはめた手をコートの下の胸元に伸ばした。
これって、スパイ映画なんかでオキマリのシーンだ。
黒づくめの風体の男が胸ポケットを探ったら、次の瞬間には、そこから銃弾が飛び出してくるって相場が決まってる。
――クソッ、冗談じゃねぇ!
オレは、ほとんど無意識のうちに、隣に置いていたギターケースを引っつかみざま、前方に向けてなぎ払った。
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