第13話 「拐われる者と追う者」



『『人ん家でドカドカ魔法放つしガンガン所かまわず武器振り回すとか、非常識かっ!』』



腰に手をあて俺達をビシッと指さす魔人の2人。

わー息ピッタリのシンクロ率。

何かパチパチ拍手したくなるね。

この空気でさすがに拍手はしませんけど。



「魔人が正論を言ってる!」

「そもそも、ここは貴方達の家じゃないでしょうに……」


俺とは違う箇所に感動するヨウスケ。

一方クロウは、呆れてため息をつきやれやれと軽く首をふっている。



『貴様等っ!よく儂の前に姿を現せられたなっ』

魔人を見るやいなや白モフは、抱き抱えていた俺の腕からダっ!っと勢いよく飛び出した。


シュタッ!

華麗に着地した白モフは毛を逆立てガルルルッッと牙をむいき2人の魔人を威嚇する。


『『お前……死に損ないの老いぼれじゃないか。無様に生きてたんだな。あのまま消えた方が楽だったろうに』』

魔人達はつまらなそうに毛を逆立てる白モフを見やる。

確かにこの状況はポメラニアンが必死に大型犬に威嚇をしている構図だな。

必死な白モフには悪いが怖いと言うより可愛い……?

どうにも緊張感が薄れる。


『黙れ若造どもっっ!儂は……儂は貴様等を倒す!!』

パキンっと氷が砕ける音が聞こえたかと思えば、白モフ自身の周りが凍てつき始めた。


『『やれるもんならやってみなよ、またひねり潰してやるよ老いぼれ爺っ!…………っ!グハッ!』』

ニヤリと嗤う魔人達。

ブワリと膨れ上がる魔力が渦となり彼らを包みこむ。


どちらが先に仕掛けるのか。

はたまた両者同時の攻撃か……


緊迫した空気が辺りを支配する中1人の男が動く。


普通に攻撃しただけなら避けられるかもしれないが、白モフに気をとられ注意力を欠いている今がチャンス。

両者が正に激突する直前。

魔人目掛けて投げつけた刃は、2人の肩と太ももに刺さる。


『『くっ、人間ごときが邪魔をするなっ!』』

「いや、だって……やれるならやってみろって言ったのはお2人さんでしょ?」

『『減らず口をっ!邪魔をするなっ!』』

わー大分ヘイトがこっち来てるね。

さて、どうするかな……

横目で皆を伺う。

戦闘準備万端みたいだし一気に攻めればなんとかなるか……




『我の領域で暴れるとは命しらずなものよ』



『出おったな!……もう1人の儂よ』

『『主様マスター!?……』』


魔人達が主と呼ぶのは白モフならぬ黒モフ。

……黒いわたあめは美味しそうじゃないなぁ。

わたあめといったら雲見たいにふわっふわなやつだよね。

今だとカボチャ味とか苺味とか抹茶味なんてのもありみたいだけど……って違うっ!!


この島のヌシ!


ラスボス!


『お主今絶対ろくでもない事考えてなかったか?』

「考えてないよ!ただ黒いわたあめは不味そうだなとしか思っただけ」

『ろくでもない事じゃろ!!真面目にやらんかっ!闘いの最中じゃぞ』


怒られた。

本当の事言っただけなのに。



『我はこの負け犬にどちらが上であるか証明してくる。我が子はそやつ等を倒せ』

『『了解しました。主様イエス・マイロード!!』』


白モフの下に展開される魔法陣。

これって転移系の魔法か!

俺ら朱の咆哮だけじゃなくランキング上位のクランでさえまだ4つのエリアボスを倒してないのだ。

陣が消えたら追うのでは時間がかかりすぎる。

考えている時間はない。

一か八かだけどやるしかないか。

……後からこってり叱られるんだろうな。



「ごめん皆、後からついて来て!」

俺はそう言いながら白モフを抱き抱えるように転移陣に入る。


入った直後、まばゆい光の粒子が辺りを包み込んだ。

なんとか間に合った……


説教は後で受けるから、そっちは頼んだよ。




・・・・・・



「あー、行っちゃったねリーダー」

「あんのバカっ!自分から拐われに行くとか……」

「クロウ殿諦めるでござるよ。リーダーは自分のしたい事をするでござるから」

「そうね、頼まれちゃったんだからしかたないわ。さっさとたおして後追うわよ」



静かに燃える闘心。

両者譲れない闘いが幕をあげた。


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