第15話 「魔人ファスvsクロウ&ヨウスケ(クロウ視点)」
『
『光栄に思いなさいよ、たかが人間ごときに私達が本気をだすんだから』
俺はふんぞりかえりドヤ顔する魔人にイラっとする。
イラつきを隠す為に、眼鏡の縁に手をかけ考える素振りをした。
落ち着け、ここであの2人のペースに合わせたら負けだ。
数的にはこちらが勝っている。
だが、あれだけシンクロしているのだから、連携した攻撃が得意なをだろう。
2人して攻撃されるのは面倒。
どうにかして1対2に持っていかなければならない。
とりあえず、執事っぽい魔人は俺とヨウスケ、メイドっぽいのをツクヨミさんとサカイさんで二手に分かれてみるか。
「ツクヨミさん、俺とヨウスケで執事の魔人倒しますので、メイドの魔人をお願いします」
指示を出し俺は、いつ攻撃が来てもいいように武器の杖を構える。
「了解。ケガは……しないと思うけど無理はしちゃ駄目よ?」
「すぐ終わらせてくるでござる」
クスリと笑うツクヨミさんと静かに頷くサカイさん。
頼もしい限りだな。
俺も2人みたいに少し落ち着ければいいんだろが、微かに震える手を止められそうにない。
呆れているのか、情けないのか……
グルグルと止めどなく溢れそうになる感情をどうにもできないでいた。
「大丈夫ですよー、2人共心配性ですね。此方もクロウさんとちゃちゃっと終わらせますから、すぐリーダーを迎えに行きましょう。ね、クロウさん」
この場にそぐわない朗らかな声。
そうだよな、ここにいるのは俺だけじゃない。
他の皆もザクロに言いたい事の1つや2つ……いや、それ以上あるだろうけど。
ザクロが1人で突っ走っていくのは今に始まった事じゃない。
アイツのやりたい事をする為に立ち上げたクランなんだ。
……俺、いや俺達は、アイツがしたいと思っているのならそれを手助けしてやればいい。
頼りないリーダーだけど、確実にこの朱の咆哮はザクロを中心にまわってる。
―皆お前が大切なんだよ。
……絶対本人には言ってやらないけどな。
震えが治まった手を握りしめる。
「ヨウスケ、準備はいいか?」
「バッチリです。いつでもイケますよー」
ツクヨミさんとサカイさんにも目線を送ると、2人共既に武器を構えていつで戦闘できる体制をとっていた。
深く息を吸い込みゆっくりと息を吐き出していく。
何も考えずただ目の前の敵に集中する。
―戦闘開始だ。
ダっ!
地を蹴り迷いなく執事服の魔人へと向かう。
走りながら魔法の詠唱を紡いだ。
先手必勝するなら……
「ウィンド・カッターッッ!」
無数の風の刃が魔人を襲う。
しかし、刃が魔人に当たる事はなく全て炎の壁に遮られてしまった。
『人間にしてはいい動きするじゃないか。だが、それでは俺達には勝てないぞ』
なるほど炎属性か。
火力もそこそこな上に防御技もあるとかデタラメすぎないか。
でもまぁ……
「俺も忘れないでくれると嬉しい、なぁーっ!」
『!……ふんっ!小賢しいガキがっ』
先程まで魔人がいた場所にドガッ!という音と共に大鎌が振り落とされた。
サカイさんは完全に気配を消せるスキル持ちだが、ヨウスケの場合【影】を自在に操るスキルだ。
影があるならば影から影へ音もなく移動出来、影に武器やアイテム何かも隠せたり、攻撃を遮る障壁も作れる。
本人は朱の咆哮で最弱とか言ってるがどう考えてもチートスキルだ……
『弱い雑魚が1人増えただけで状況は変わらないんだよっ!クソがっくらえっ!ファイヤーボール!』
「ハハっ!悪いけど俺達は弱くないよ?特に……」
ヨウスケは飛んでくる火球を避けて大鎌で切り裂く。
ステップを踏むように軽い足取りで俺の後ろに下がる。
「足止ご苦労様です、ヨウスケ。準備が出来ました」
「俺はアシストにまわります、存分に暴れて下さいねクロウさん。あ、でも……」
体の内から溢れ出す魔力。
高濃度の魔力が体を包み込みまばゆい光を放つ。
「《
グワリ、グニャリと形を変えるそれは物凄く異様な光景だ。
しかし、魔人は動く事なくそれを見ている。
いや……動く事すらできないのだ。
畏怖すら覚える圧倒的なこの魔力に……
現れたのは一匹のスライム。
だがただのスライムではない。
『……メタル……キングスライム、だとっ!?S級の上、SS級の魔物がどうして此処に!』
「慈悲などありません、とっととくたばってください。“メタル・アロー”」
放たれるは数百にのぼる無数の金属の矢。
無慈悲に魔人を何百もの矢が貫いていく。
「クロウさんなら一瞬で片しますよね。俺のアシストいらなかったな~」
ツクヨミさんとサカイさんはどうなったのだろうか?
2人に限って負けるはずはないと思うが……
俺は彼らの闘いに視線を向けた。
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