第5話 「海!無人島?サバイバル生活だー!」




「今回のイベントの舞台は海よッッッ!!!」




ドドーーンッ!っと背景に効果音付きそうな程迷いなく発せられた言葉。

心なしかツクヨミさんはやりきった顔だ。


ヨウスケはフラりとよろけたかと思うとガクリと膝を付き項垂れた。


「いや、今冬ですよ?何でわざわざ海に行かないと行けないんですか?って言うか夏イベでやったネタ!!2連続で海ネタって何っ!?あの公式はネタでも尽きたのかっっっ!!冬の海で何をしろと!」

ヨウスケ君、素!思いっきり素がでてるよ。

君はツッコミ役じゃなくて陽キャイケメンって言う大事な役割があるだろ。

ただでさえ変人っぽいと認識されてるんだから、1人だけでもイケメンが居てくれないと……ぽさも消えて心証照明の変人クランになってしまう。

……ん?

もう手遅れ?そんなわけないじゃない……いや、既に遅いのか?



「仕方ないでござるよ、あの公式でござるから」

「諦めるしかないですね、公式ですし」

「そうそう、今さら季節感を公式に求めてないもの」

三者三様の励まし?

いや、励ましにはなってないよね?

励ましてると見せかけて3人共公式ディスってるだけでは?



確かに、今年の夏イベントで海ではしゃいだ思い出が……いや、はしゃいでたのはクロウ、ヨウスケ、ツクヨミさん、サカイさんの4人だけだな。

俺は単独行動中なぜか無人島に流れついて、皆と合流出来ずに最終日まで魔物を狩って1人サバイバル生活してたんだった。

最終日島のヌシ的な魔物を倒しなんとか皆と合流出来たのは良かったけど、イベントはクライマックス直前。

なぜ、皆がヒートアップしているのか状況が呑み込めないまま大規模レイドバトルが開始された。

とりあえず、目の前のラスボス的な魔物倒せばいいのか?と思い隅っこでチマチマ攻撃してたけど……


無事ラスボスを撃破し沸き立つ皆。


俺は喜ぶに喜べないでいた。

あれだ……楽しみにしてた特番なのに、最初だけ見て寝落ちして起きたら既に見せ場のシーンが終わりエンディングだった時のショックに似ている。

……無人島生活も楽しかったからいいけどさ。

俺も海辺でバーベキューしたかったなぁ。



イベント終了後。

案の定こってりクロウに叱られました。

1時間超えのお説教タイムを耐え抜いたよ。



ただ、イベント後。

ランキング発表&報酬配布であの無人島が隠しエリアである事が発覚。

無人島の魔物は通常のイベント限定魔物より撃破ポイントが高く、島のヌシであろうと思ってた魔物はやはりボス魔物だった。

ヌシを1人で撃破してしまった俺はぶっちぎりで総イベントポイント1位。

クロウだけじゃなくヨウスケ、ツクヨミさん、サカイさんからも白い目で見られる事に……

イベント報酬を受け取る間かなりアウェイな空気が流れていた。

うぅ、思い出しただけで胃が痛い。



「開催期間は2週間。辺り一面海で脱出不可能な断崖絶壁な無人島が舞台みたいね」

「イベ中はサバイバル生活か~、脱出不可能って、クランハウスにも制限かかりそうですねー」

「でも、無人島でサバイバルだったら撃破数でポイント稼ぐ感じですかね?」

「そうみたいでござるな。魔物を撃破したらポイントがついたでござる。高ランクの魔物になるにつれポイントも上がる感じであったでござる」


……。

…………?

断崖絶壁の無人島でサバイバル生活?


つい最近しましたね。

島のヌシとは死闘を繰り広げた仲だ。


つまりあれだ。

隠しエリアではなく。

まだ隠している新イベントエリアだったワケか。

なーる、なる、なるほど。



「って、分かるかぁぁぁああっっっ!!?」



「うるさっ。ちょっとリーダー大丈夫?いつも以上に壊れてない?」

うっかり叫んでしまっていたのか俺の大声にビックした様子のヨウスケ。

「えっ!?あぁ急に叫びたくなっただけだから大丈夫!」

「どんだけ情緒不安定なんですか?とりあえず回復魔法キュアかけときますよ」

「ありがとう、クロウ」

大分落ち着いた……気がする。




「とりあえずイベントエリアに行ってみましょうか?……拠点を作って置きたいけど時間も時間だし近くのポータルエリアでログアウトする感じでいいかしら?」


ツクヨミさんの提案に異論がないので、俺は頷いた。

他の3人も肯定の意を示す。




こうして俺達は、イベントエリアに向かうのだった。



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