第4話 「朱の咆哮」


「皆集まった事だし、イベントの対策をするわよ」


クランメンバー専用のリビング。一応来客用のリビングもある事はあるのだが、クロウの魔道具置き場になりつつある。

本人はちゃんとしまってるみたいだけど、用途不明な魔道具だらけで無闇やたらに触ろうと言う考えすら起きない。

まぁ、クロウの性格からして管理を怠ることはないだろうし。

ただ、壊滅的に片付けが下手なだけである。



リビングは大きめなテーブルに椅子が置かれていて、4人それぞれ自分の好きな定位置に座っている。



クラン“あか咆哮ほうこう”。

纏まりが悪そうに見えるがこれでも、数あるクランの中で上位ランクに位置している。

見えないだろうが……


ちなみに俺とクロウが立ち上げたクランでリーダーは俺、副リーダーはクロウ。

司会進行は普通だったら俺かクロウがするべきなんだろう。

自分で言うのもあれだが、個人の性格がバラバラで感性が独特すぎるメンバーを纏めあげるのは無理。

そんなクランメンバーで唯一の常識人がツクヨミさんだ。


なのでツクヨミさんに進行役をやって貰ってます。


あと、飴と鞭の使い方が上手いって言うのかな?

締める所はキッチリ締めるし。

個人の長所をいかした適材適所ってやつです。

うん、決して皆からの尊敬がゼロに等しいとかそう言うんじゃないよ。



「ハイハーイ、ツクヨミさん。サカイさんいないけど?」

キョロキョロと室内を見渡すヨウスケ。


「あぁ、サカイ君には偵察を頼んでたのよ。今ある情報だけじゃ対策練られないもの」


朱の咆哮メンバーは全員で5人。

もう1人サカイさんって人がいる。



サカイさんの職業はアサシン。

隠密行動に長けているので情報収集をしてもらう事が多い。

その為普段は別行動になりがちになるんだよね。


でも、クランを立ち上げた時にメンバー内だけの決まりとしてイベント対策等の集まりは基本全員集合と決めてある。

現実での用事もあるだろうし多少の遅刻はありだけど。


サカイさんはアサシンだから気配を消すの得意なんだろうけど、上手すぎて……と言うか1種の才能?だと思うよ。

同じクラスメンバーでも気付かない事がたまにあるから。


気がつかないだけですぐ側にいたりするんだよなぁ……



「リーダー此方が偵察の情報を纏めたものでござる」



「どうも。……ってサカイさん!?」

「……サカイさん帰られてたんですね」

「サカイさんお帰り~」

待って!

不意討ちは心臓に悪い。

いつも通り対応してるつもりだろうけど、クロウとヨウスケ内心ビビってるだろ。



「あんた達何言ってるのよ。サカイ君ならあんた達が3人でワチャワチャしてる時に帰ってきたじゃない」


「「「……え?居たの……!?」」」


見事に3人でハモってしまった。

「うむ、ツクヨミ殿の言う通り居たでござる。ちょうどクロウ殿がリーダーを背負い投げする辺りでござる」


それほぼ最初からじゃん。

全然気付かなかった。

気配がなさすぎるだろ……

と言うか、帰っているのなら普通に座ればいいのに。

なんで俺の椅子の横に片膝を付き居るんだろうか?

語尾とそのポーズだとアサシンじゃなく忍者っぽいよ。

でも、意外にワンエデの職業に忍者ってまだないんだよ。

和風の職業って人気高そうだけどエリアすらないからなぁ……



サカイさんから渡された用紙には、偵察で集めた情報が箇条書きで書かれていた。

大きさはだいたいA4ぐらいかな?

片面だけじゃ書ききれなかったのか両面に書かれてる。


意外にあるなー……

と思いつつ無言で目を通していく。


「……」


俺は、読み終わった用紙を何も言わず近くにいたツクヨミさんに渡した。

ツクヨミさんも終始無言で読んでいる。

心なしか表情が険しい。



「で?何が書かれてたんですか?」

「気になる~。やっぱりハロウィンイベなの?」

やっぱり2人も気になるよね。

期間限定イベントだしワクワクするの分かる。

分かるけど……




「今回のイベントはね……」

ツクヨミさんは言葉を一旦区切った。

シーンと静まり返ったリビング。



ゴクリ。

固唾を飲んだクロウとヨウスケは、ツクヨミさんの次の言葉を待った。


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