第3話 「クランハウス」
「で?何か言う事あるんじゃないザクロ?」
照明に照らされ眼鏡がキラリと光る。
仁王立ちの黒髪の銀縁眼鏡なイケメン魔導師様がお怒りです。
Q:クランハウスに着いた俺―ザクロが何でお怒りな親友―クロウの前で正座しているのでしょうか?
A:クロウからの通知に気づかなかったから!(通知数20超え)
「いや、だって……狩りの最中に通知来たら鬱陶しいじゃん?わざとじゃない……わけで。…………すいませんでした」
圧がスゴいです、クロウさん。
昨日草原エリアで狩りまくってる時、通知が鳴る度気が散るのが嫌でサイレント機能をオンにしていた。
その事をすっかり忘れていた俺は、クランハウスに入った途端問答無用でお怒りのクロウに背負い投げされた。
パチくりと目を瞬かせる。
視点がいきなり90度ぐるりと変わり状況を飲み込めないでいた。
だが、視界に入るクロウを見て何か怒らせる事したっけ?
と、ボンヤリと考えるが分からなく首をひねった所で尚更クロウの怒りのボルテージが上がってしまったわけです。
仁王立ちで腕を組むクロウの前で正座して説教され、冒頭に至る……
「ハァ、ザクロの脱走癖は今に始まった事じゃないけど、探す方の身にもなってほしいんだけど?」
「脱走癖って……俺は野良猫か何かか?」
「自由気ままに散歩して、お腹が空いたから帰ってくる……何か間違いある?」
「……ないであります」
思い当たる節は……うん、かなりありますね。
何も言い返せない。
ショボーン。
項垂れる俺を見たクロウは、ため息を付き優しく頭をぽふぽふと撫でる。
「もう怒ってないよ」
「クロウ……」
キラキラした顔でクロウを見上げる。
しかし、次の言葉で固まってしまった。
「ただ、次やったら位置探索付きの魔導首輪付けるからね」
「……ハイ……」
絶対まだ怒ってるやん。
ニコニコな笑顔に騙される所だったけど、これはキレてる。
「あれぇー?クロウさんリーダーの説教終わったんですかー?」
クランメンバー専用のリビングから顔を出したのは、方まで赤髪をハーフアップにしている陽キャイケメン―ヨウスケ。
「えぇ、終わりました。当分は静かだと思います。当分はですが」
「ハハハ、リーダーの脱走癖治すとか無理ですよークロウさん。絶対治らないに1票賭けてもいいよー」
「ですよね。やっぱり最終的にはアレですかね……でも素材集めが大変なんですよね。……いや、でも今の手間を考えると視野に入れた方がいいか」
「あ、じゃあ俺も手伝いますよ!素材集め好きだし」
「助かりますヨウスケ。ではこの素材と……」
えっと、君達の目の前に当人いるんだけどな。
何、2人には俺は見えてない的な?
そしてクロウ最終的なアレとは……
位置探索付きの魔導首輪が最終的じゃないの?
首輪より最終的なやつってなんですか……ランクが高いクロウが集めるの大変なレベルの素材ってなに!?
ヨウスケも手伝わなくていいから!
クロウ1人でもやっかいなのに、アーティクトファクト並みの魔道具作りかねないよ。
「もぉ、3人とも何やってるのかしら?イベント対策の話し合いするわよっ!」
救世主とはこのことか。
スタイル抜群な上、バーンと効果音が付きそうな豊満な雄っぱ……ゲフン、ゴフッ……!
豊満な筋肉。
見た目柔らかそうだがあれは筋肉!!
個性的なクランメンバーの中唯一の常識人。
皆の頼れるオネェ様―ツクヨミさん。
「ほら、リーダー行くわよ!あんた達2人も早くきなさい」
ん?
いや、待って。
ツクヨミさん俺を担ぐ必要あります?
俺が猫ってイメージはクランメンバーでは常識なのか。
いや、そんな事……
聞くに聞けない疑問はそっと心の内にしまっておこう。
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