第2話 「フルダイブ型VRMMO『World Another Eden』」
―パチリ。
目を開くとそこは、異世界でした。
って冗談はそこそこにして。
仮想空間へのダイブは未だに慣れない。
吐く訳じゃないけど、車酔いとか、船酔いとか、ジェットコースター乗った後の独特の浮遊感に似た足元覚束なくなるあの感覚に似てるんだよなぁ。
でも一定数、三半規管弱いプレイヤーがフルダイブ酔いする事例があるらしい。
公式も分かっているみたいだけど、個人の体質の問題だから酔い止め飲んだりして対処してくれってしか言えないみたいだ。
初めてプレーした時程じゃないから……慣れもあるんだろうけど、今も一応酔い止め飲んでからやるようにはしてる。
うぅ、にしてもやっぱり残業後のフルダイブはキツい。
仕方ない、もう少しここにいるか。
昨日はレベル上げの為に狩りをしていたから、草原エリアのフィールドにある簡易ポータルからログオフしたんだっけ。
芝生の上にゴロンと寝転がる。
簡易ポータルから半径2メートル内は魔物の侵入、
芝生の香りと日差しがポカポカして気持ちいい。
絶好のお昼寝日和って感じだ。
まぁ、現実じゃ夜だからお昼寝ではない気がするが。
あまりにもリアル過ぎてここがゲーム内の仮想空間だって事を忘れてしまいそうになる。
フルダイブ型VRMMO『
―通称ワンエデ。
ワンエデには大まかに3つの国が存在している。
騎士、魔術師、アサシンなど主に人間が住まう―“
オーガ、獣人、スライムなど主に魔物が住まう―“
エルフ、妖精、聖獣など主に聖霊が住まう―“
プレイヤーはまず種族、
新米冒険者または新米生産者からのスタートして、3つの国を冒険していきレベルを上げていく。
冒険者となり冒険するのもよし。
ドワーフとなり生産するのもよし。
ユーザーランキングを上げるのもよし。
―ワンエデに決められた道筋はない。
現実ではない世界で自分だけの、自分にしか紡げない物語を1から創り出す。
……が、コンセプトらしい。
俺は既に決めてたけど、決められない人や運まかせって人はランダム設定で選ぶ人もいたみたいだ。
運がない俺にはてできない芸当だな。
最近発売されるゲームはフルダイブ型のゲームが主流になりつつある。
そのフルダイブ型VRMMOの火付け役と言ってもいい。
元々VRゲームは人気が高かったが、フルダイブ型が発売された当初革新的としてどこのゲーム雑誌も特集記事が組まれていた。
ワンエデの醍醐味の1つとしてあげらるるのは、五感を仮想空間とリンクさせる事だろう。
五感―味覚、嗅覚、視界、聴覚、触覚を独自の技術で仮想空間とリンクさせる事で、まるで現実で実際に体験していような感覚を味わえる。
現に今寝転んでいる草の感触や時折風がそよぐ音、視界いっぱいに広がる景色。
現実じゃない……別世界にいると言われたら、あぁ、そうなんだと信じてしまいそうになる。
それぐらいリアルなのだ。
ワンエデがリリースされて2年。
知らない人の方が少ないだろうって程の人気ゲームになった。
しかし、人気ゆえか……
サーバー拡張に伴う新規プレイヤーは事前応募による抽選式。
抽選の当落日にはSNSのトレンドに上がるぐらいに盛り上がる。
まぁ俺の場合、β版テスターである親友の正式リリース特典である新規プレイヤーチケットのおかげだったり……
なぜなら俺に運という概念はない!
親友にも「お前運ないもんな」と哀れんだ目で言われたもん。
くっ、悲しくなんかないからな。
無事……無事?親友のアシストのおかげで第1陣ユーザーとしてプレー出来たけど。
俺自身の運だけじゃ、絶対今も落選しまくってるだろうな。
ハッ!
ヤバいイベント!!
「しっ!クランハウス行くか」
なんとか酔いが治まった俺は、勢いよく芝生から起き上がると目的地に歩き出した。
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