第1話 「ありふれた日常」


「はぁ……。今日も虚しくコンビニ弁当か……」


プシュッ。

小気味良い音を立て缶ビールを開けゴクリと喉を潤す。

うんうん、やっぱり残業開けのビールはウマイねぇ~……


弁当の蓋を開け「いただきます」と言い付け合わせのおかずに箸をつけた。

今日のチョイスは、大根おろしがかかってる和風ハンバーグ弁当。

まぁ、深夜に近い時間だったからかコンビニの弁当コーナーもスカスカで選択すると言うよりあるのを適当に選んだだけだが。


黙々と弁当と時々ビールを飲みながら1人晩餐をしていると、テーブルに置いてあるスマホが点滅しているのに気づく。

行儀が悪いと分かってるが、箸を持ってない手でスマホをタップしてお目当ての画面を開いた。



「お、イベント告知来てんじゃん」


元々ゲーム好きだったけど、高校からの腐れ縁な親友のススメで始めたフルダイブ型VRMMO。

普通のVRゴーグルと違い、フルダイブ型は意識を仮想空間とリンクさせる独自技術を搭載しているからちょっとお高め……1人暮らしだし中々手が出せないでいたんだけど、β版テスターの親友が正式リリース特典として未発売のフルダイブ型ゴーグルを貰ったらしく、お古でもいいならって事でいい値で買い取らせて頂きました。


ありがとう親友!


今では親友達同様にすっかりハマってしまい、帰宅後毎日プレーするのが楽しみだったりする。

たまに親友とゲーセンとかに出かける事はあるけど、最近は休日もVRMMOをプレーして過ごしてるぐらいだし。


だからわざわざVRゴーグルを起動して確認しなくてもいいようにスマホにも通知が届くよう設定している。

と言うか初期化から諸々の設定は親友がしてくれたんだけどね。



おおっと!そうだった……イベント、イベント!

ふむ、どうやら今回の通知はイベント開催のお知らせらしい。

スクロールしながら開催期間と大まかな概要のみの簡素な文に目を通していく。

「なるほど、なるほど……」

あらかた目を通し終わりスマホから手を離す。

うんうんと頷いた俺はテーブルに突っ伏した。

ガンっと頭をぶつけたが気にしない……いや、気にしてられないが正しい。



何で……



「何で!イベント開始が日付変わってすぐなの??今日?……いや明日か……平日なんだけど!?明後日土曜じゃん明日開始でもよくない!?」

社会人だけじゃなく学生もキツい時間からイベント開始はないわー


数々の伝説と言う名の鬼畜イベントを敢行してきてるあの運営の事だから分かりきってやってるよな絶対。

でもこの時期のイベントとなるとやっぱりハロウィンだよな。

生産系だとコスプレ?

スケルトンとかアンデッドの討伐系もあり得る。

……いや、待て。

あの運営がそんな安直な事するか?


……


…………うん、絶対ないな。

プレイヤーの阿鼻叫喚みて喜ぶ運営だ。

事前告知なしの大型イベント開催とか平気でやりそう。



てか、運営の1番の被害者は運営のシステムエンジニアさん達だよね。

毎度の事ながらお疲れ様です。



―日付変わるまであと30分。


サーバー混み合うしなんとかイベント始まる前にログインしたい。


残ってた弁当をかき込み、帰宅してすぐ沸かしてた風呂に入る。

烏の行水並みの早さでパパっと入浴を済ませ素早く寝る準備をした。

寝不足で明日寝坊した時の為に鞄に必要な物を積めておく。


よし!準備万端!


俺はベッドに横になり一息つく。

スマホで時間を確認すると23時58分。

イベント開始になんとか間に合ったみたいだ。



よし、ログインしますか!



俺は頭にフルダイブ型VRゴーグルを装着すると起動ボタンを押した。




……次第に暗くなっていく視界。

未だにこの闇に沈んでいく感覚は慣れないんだよなぁ。




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