第57話 チーム練習4
「こ、この後はどうするのかな?」
僕は正直に自分のユニークスキルを打ち明けたのだが、なかなか信じてくれない黒崎。
どうやらこの女は、僕がもっと強いユニークスキルを持っていると予想していたようだ。
微妙な空気の中、沈黙を破ったのは早乙女だった。
黒崎の方を向いて、この後何をするつもりなのかを尋ねる。
まさか互いのユニークスキルを明かし合ったところでお開き、なんてことはないだろう。
「そうね……さっきも言った通り今日はお互いの実力を把握することが目的。ユニークスキルは実力を図る一つの指標になる。でもそれが全てじゃない。本当の実力は…戦ってみなければわからない」
「た、戦う!?」
「…」
やはりそうくるか。
まぁ黒崎の誘いを受けた時点でそんな気はしていた。
「そう。戦いましょう。一種の模擬戦ね。どうかしら?」
「わ、私、すごく弱いよ!?さっきも言ったけど、治癒に関してしか能がなくてそのほかは…」
「安心して、早乙女さん。ユニークスキルをはじめとするスキルは使用禁止、と言うルールでやりましょう。スキルを取り除いた素の戦闘力を確かめ合いましょうか」
「す、スキル禁止……そ、それなら…」
スキル無しの戦いなら危険も少なくなるだろう。
早乙女はどうやら納得したようだ。
「わ、わかった…!そう言うことならわたしは賛成…!」
「ありがとう。あなたは?」
黒崎が僕の方を見てくる。
聡明さを窺わせるその黒い瞳には、なんとかして僕の実力を炙り出したいという意図が透けて見えた。
互いの実力を把握するため、と言うのは建前で、黒崎の本音は僕との一対一での模擬戦なのだろう。
「スキル無しならまぁ、構わないよ」
とはいえ、断れる状況でもない。
スキル無しのルールならどのみち本当の実力はわからないし、危険も少ない。
そのぐらいならいいだろうと、僕は黒崎の提案を飲んだ。
「決まりね…それじゃあ、まずは私と早乙女さんとの勝負でいいかしら?勝った方が雨宮くんと勝負すると言うことで」
「わ、わかった」
「僕も了解」
「そう。では準備しましょうか」
第一戦は早乙女対黒崎というカードになった。
まぁ二人のステータスが見えている僕にしてみれば、結果はすでに決まっているも同然でどちらが僕と戦うことになるのは明白なのだが。
「まぁいい。見ておくか」
僕は訓練室から一旦出て、二人の戦いを観察することにした。
「こ、降参…!」
「まぁ、こんなものかしらね」
黒崎と早乙女の勝負は一瞬でついた。
結果はもちろん黒崎の勝利。
スキル無しの戦い。
それは一見、弱者が強者を倒せるチャンスのあるルールに思えるがむしろ逆だ。
スキル無しのルールでは、素のレベルとパラメーターがモロに出てしまう。
よって…
「く、黒崎さん強すぎるよ…」
「これでも手加減した方なのだけれどね」
早乙女と3倍以上のレベル差がある黒崎の圧勝という結果になってしまった。
勝負の時間は1分にも満たなかった。
早乙女はそもそも黒崎の動きを目で追うことすらできていなかった。
黒崎は早乙女に何もさせないまま、投げ技よろしくその体を地面に叩きつけて身動きを封じだ。
「大丈夫かしら、早乙女さん。怪我はない?痛むところは?」
「だ、大丈夫…一応スキルも使ったからもう痛みもないよ」
早乙女が地面に投げ出される寸前、かなり鈍い音がしたからダメージが心配だったが、早乙女は自分のスキルを使って早々にダメージから立ち直ったようだった。
「そう。なら良かったわ」
「うぅ…何もできなかった…黒崎さんがこんなに強かったなんて…」
「大丈夫よ。弱点はこれから克服していけばいい。私がチームメイトの間に、あなたの直接戦闘力を必ず向上させるわ」
「あ、ありがとう…」
あっさり負けた早乙女を黒崎が励ましている。
案外優しいところもあるようだった。
「じゃあ、僕と黒崎の勝負か」
「そういうことね」
初めからこうなると分かっていたので驚きもない。
僕が訓練室の中へと入り、早乙女が退出した。
僕は訓練室の真ん中で黒崎と向かい合う。
「お手柔らかに頼むよ」
「…それは了承しかねるわね」
黒崎が表情を引き締めながらいった。
早乙女の時とは気迫が違う。
おそらく……最初からそれなりの力を出して僕の実力を早々に見極めるつもりなのだろう。
「それじゃあ、やるか」
「ええ……ふふ、楽しみね」
黒崎が不敵に笑う。
そうして僕と黒崎のスキル無しルールでの一騎打ちが始まった。
〜あとがき〜
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