第56話 チーム練習3



「逃げようとしても逃してくれないだろ?君が」


「まぁ、ね」


わかっているじゃない、と言わんばかりに黒崎が笑みを浮かべる。


「まぁ、僕もすでに君たち二人の能力を知っちゃったからね。ここで自分だけ言わないなんて卑怯なことはしないよ」


「御託はいいから…早く聞かせてちょうだい」


「…わかったよ」


黒崎は僕のユニークスキルが聞きたくて仕方がないようだ。


「…っ」


早乙女もごくりと喉を鳴らして僕を真剣な表情で見つめている。


「そんなに期待されても困るんだけど……最初に断っておくけど僕のスキルのランクはGだ。最低のFランクのさらにその下だ。それをわかった上で聞いてほしい」


「早くしなさい」


「聞かせて…雨宮くん。私、知りたい」


待ちきれないと言った様子の黒崎と早乙女。


僕はそんな二人の前で自分のユニークスキルを明かした。


「僕のユニークスキルは『迷宮発見』。ダンジョンを発見するスキルだ」


「「…」」


ぽかんとする早乙女と黒崎。


冗談だろ?


そんな表情で二人とも僕を見つめている。


まぁ、この反応は予想通りだ。


「冗談よね?」


本当に言った。


「違うぞ。本当だ」


僕は答えた。


「ほ、本当に…?」


黒崎が信じられないと言ったように再度聞いてくる。


僕は頷いた。


「本当の本当だ」


「…」


黙る黒崎。


早乙女はいまだにぽかんと口を開けたままだ。


「だから最初に断ったろ。期待されたら困るって。僕のユニークスキルランクはGなんだ。Fのさらにしただ。だから、こんなものだろ」


「ダンジョンを発見って……どう言うことなの?」


黒崎が呆然としながら聞いてくる。


「そのままの意味だ。僕のスキルはダンジョンを発見するためのスキルだ。それ以上でもそれ以下でもない」


嘘は言っていない。


僕のスキルは『ダンジョンを発見する』ためのスキルだ。


僕は何一つ嘘は言っていない。


…仮に客観的に見て説明不足だったとしてもそんなこと僕の知ったことではない。


「そ、それって、ほとんど意味ないんじゃ…あっ」


早乙女がポツリと呟いて、慌てて口を注ぐんだ。


「ご、ごめん…雨宮くん…」


「いや、そう言われるのも無理はないだろうな。見方によっては確かに僕のスキルはほとんど役に立たない。ことモンスターとの戦闘においてはほとんど意味をなさない」


「ち、違うの…雨宮くんが強いのは知ってて……貶したいわけじゃなくて…」


「わかってるさ早乙女。僕のスキルの能力を聞いた人間は大体同じ反応になる。早乙女に悪気がないのはわかってるよ」


「…本当にごめん」


しゅんとしてしょげてしまう早乙女。


一方で黒崎は、ようやく衝撃から立ち直ったようだった。


「本当にそれだけなの?」


「…何が?」


「あなたのユニークスキル……本当にダンジョンを発見するためだけのものなの?」


「…そうだが?」


少し探るような視線を向けてくる黒崎。


どうやら僕のスキルにないか隠された他の力があるのではないか、あるいは僕が嘘をついているんじゃないかと疑っているようだ。


だが、僕は誓って嘘はついていない。


僕のスキルは『ダンジョン』を発見するためのスキルだ。


この言葉に間違いはない。


「嘘はついていないわよね?私たちは正直に自分のユニークスキルを明かした。あなただけ隠すのは卑怯よ」


「疑われるなら仕方がない。僕は本当のことを言っただけだ。僕のユニークスキル『迷宮発見』花前からもわかるように迷宮……つまりダンジョンを探すだけの力だ」


「…そう」


黒崎はあまり納得がいってなさそうな感じだった。


「まぁ、どちらにせよ、チームとして一緒に行動して、ダンジョンに潜ったりしていればいずれわかることだわ。あなたの言っていることが嘘か本当か…」


どうやら完全に僕を信じたわけではないらしい。


「わ、私は信じるよ、雨宮くん!」


早乙女が僕を見てそんなことを言った。


「ありがとう早乙女さん」


僕がにっこり笑ってお礼を言うと、早乙女がわずかに頬を赤くした。


「ふん……まぁ今はそう言うことにしておきましょうか」


一方で黒崎は一旦僕のユニークスキルのことに関しては保留にしておくようだった。

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