第54話 チーム練習



「せっかくチームを組んだのだし、三人でお互いの実力を確認しておいた方がいいと思うのだけれど」


A58ダンジョンを攻略した翌日の放課後。


僕はダンジョン攻略ノルマのために組んだチームのメンバーの黒崎から放課後の訓練の誘いを受けていた。


ダンジョン攻略ノルマの期限まではまだ時間があるが、早い段階でお互いの実力を把握しておきたいと黒崎が主張したのだ。


「お互いの弱点がわかれば……庇いあうこともできるでしょう?」


「…まぁ、そうかも知れないが」


もっともらしいことを言う黒崎だったが、チームでの訓練に便乗して僕の実力を見極めい、そんな意図が透けて見えた。


もしかしたら僕と模擬戦を行いたいと誘ってくるかも知れない。


面倒だ。


僕はこいつに僕の全力を披露するつもりはない。


なんとなくそんなことをすれば、今以上に絡まれる気がするからな。


「もちろん早乙女さんも誘うわ。構わないでしょう?」


「…もう少し後でもいいんじゃないか?」


「いいえ。ダンジョン攻略ノルマを達成できなかったら退学の可能性すら出てくる。早い段階で準備しておくに越したことはないわ」


「…そうかな?」


「そうよ」


有無を言わさぬ黒崎の視線。


僕とそれからお前がいればダンジョン攻略ノルマを達成できないことなんてあり得ないと思うんだがな。


「わかったよ」


今日の黒崎は折れそうにない。


そう判断した僕は、無駄な抵抗はやめてここは黒崎の提案を受け入れておくことにした。


「ありがとう。じゃあ、早乙女さんを連れて行くからあなたは先に訓練室を確保しておいてちょうだい」


「了解」


そう言うわけで僕はその場で黒崎と別れ一足先に教室を出て訓練室へと向かうのだった。


 

「お互いの実力を把握するのが今日の目的なんだよね…?えっと、具体的に何をするの…?」


それから十分後。


僕と黒崎、そして早乙女は三人で訓練室の一つを貸し切ってその中にいた。


早乙女が緊張した面持ちで言い出しっぺの黒崎に、何をするのかと尋ねている。


「そうね……まずはお互いのユニークスキルを明かし合わない?」


黒崎がチラリと僕を見ながらそういった。


「…」


僕は黒崎を細い目で睨む。


なるほど、それが目的か。


僕の実力を確かめる前にまず僕のユニークスキルの力が知りたいと…


「わ、私は別にいいよ…!というか雨宮くんにはもうすでに教えちゃってるし…」


早乙女が同意した。


「私ももちろんチームメイトたちであるあなたたち二人に、自分のユニークスキルを明かすことが出来るわ。雨宮くん、あなたは?」


もちろんあなたもユニークスキル、教えてくれるわよね?


黒崎の視線からそんな圧を感じる。


「はぁ…わかったよ」


僕はため息を吐いて頷いた。


「別にスキルを明かしたところでそんなのは実力となんの関係もないと思うけど……チームメイトの黒崎と早乙女にユニークスキルを明かすことは構わないよ。何より僕はすでに早乙女のユニークスキルを知っちゃってるしね」


早乙女の情報だけ知っていて僕は明かさない、と言うのは不公平だろう。


「決まりね」


黒崎が目的は達したと言わんばかりに口元を歪める。


やれやれ。


色々と油断ならない女だ。


「そ、それじゃあ私から…!」


互いのユニークスキルの力を明かし合うことになった僕たち。


先陣を切ったのは早乙女だった。


「雨宮くんはすでに知ってると思うけど……私のユニークスキルは『完全治癒』。どんな怪我でも一瞬で治すことのできるスキルです!」

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