第48話 有村蘭子の驚愕2



A58ダンジョンの第一層を意気揚々と進んでいく雨宮裕太。


有村蘭子は予想外の雨宮裕太の実力に驚きながらも、まだ裕太はゴブリンしか倒していない、きっとそのうち助けが必要になるはずと自分に言い聞かせて尾行を継続する。


『グゲ』


『グギ』


二十匹以上のゴブリンの群れを簡単に掃討してみせた裕太の前に次に出現したのは、ゴブリンの上位種であるゴブリンアーチャーとゴブリンウィザードだ。


「……(これはかなり厄介な組み合わせね。相当苦戦するはずよ)」


有村は裕太の苦戦を予想した。


ゴブリンアーチャーとゴブリンウィザードは二匹とも遠距離攻撃を得意とするゴブリンの上位種であり、二匹同時に出現するとかなり厄介だ。


ゴブリンアーチャーの矢を避ければ、ウィザードの魔法が、魔法を避ければ矢が飛んでくるからだ。


あの二匹を仕留めるには、どのようなタイミングで放たれるかわからない矢と魔法の遠距離攻撃を避けながら接近する必要がある。


「……(さて、良い加減私の出番かしらね)」


有村が「だから言ったでしょう?高ランクダンジョンはあなたの手に負えないと」というセリフを頭の中で準備しながら飛び出すタイミングを伺う中、裕太は平然とアーチャーとウィザードの二匹と対峙していた。


『グゲ』


『グギ』


ゴブリンアーチャーとゴブリンウィザードがほぼ同意に裕太を狙って攻撃を行なった。


まずアーチャーの矢が、少し遅れてウィザードの魔法が裕太に迫る。


「……(ちょ、なんで動かないの!?せめて回避行動ぐらい取りなさいよ。それとも見えてないの…?)」


なぜか裕太は二匹の攻撃の軌道上に立ったまま動かない。


有村が助けに出ようとした寸前、裕太の手がブレたような気がした。


「……(は…?)」


そして次の瞬間、信じられないことが起こった。


「……(はぁああああ!?)」


ブレた裕太の手が気付けばゴブリンアーチャーの矢を掴んでおり、裕太はその矢をゴブリンアーチャーに向かって投げ返した。


そして遅れてやってきたウィザードの魔法はというと……


クルッ!


裕太が何もせずとも、その進行方向を百八十度ターンさせて、ゴブリンウィザードに向かって跳ね返っていく。


『グゲ!?』

『グギ!?』


ゴブリンアーチャーとウィザードは、二匹ともが、自らが放った攻撃によって絶命してしまった。


「……(一体何が…)」


あまりの出来事に有村は呆然とする。


だが少しして、一体何が起こったのか理解してしまう。


「……(おそらくこうだわ…信じられないことだけど、雨宮裕太は先に飛来したゴブリンアーチャーの矢を素手でキャッチして投げ返し、次にきたゴブリンウィザードの魔法を『反射』のスキルで跳ね返した……おそらくそうだわ)」


有村は元Aランク探索者の経験から雨宮裕太が何をしたのかを理解する。


「…(ゴブリンアーチャーの矢を素手でキャッチとか聞いたことないわよ……一体全体どんな動体視力してんのよ…)」


裕太の闘い方は、元Aランクの有村でも見たことのない前代未聞の闘い方だった。


あのような乱暴な闘い方は、相当ステータスが高くないと出来ないはず。


「……(な、何者なの、雨宮裕太……本当に未成年?探索者育成高校の新入生なの…?)」


有村が呆然とする中、ゴブリンアーチャーとウィザードの魔石を回収し、『収納』した雨宮はその先へと歩みを進める。


少しして我に帰った有村は慌ててそれに続く。


「……(というかさっきから普通にスキル『収納』を使ってるけどあれ結構なレアスキルよね。学生が持っているようなスキルじゃないけれど…一体どうやって手に入れたのよ)」




〜あとがき〜


異世界ファンタジーの新作


『主人公に殺されるゲームの悪役貴族に転生したから死なないために魔法鍛えまくって主人公手懐けてみた』


https://kakuyomu.jp/works/16817330650769517973


が連載中です。


そちらの方もよろしくお願いします。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る