第46話 帰還、そして成果



有村さんと一緒に地上へと戻った僕は、探索者センターで魔石の換金をしてもらうことにした。


「すべての魔石を換金なされますか?」


「はい。最初にゲットした魔石だけは記念に取っておくとして……残りはすべて換金で」


僕はダンジョンに入って一番最初に倒したゴ

ブリンの魔石だけは記念に取っておくとして、残りの魔石はすべて換金してもらうことにした。


「ええと…うわ、すごいですね。これ全部今日の収穫ですか」


「そうですけど」


「…本当に今日初めてダンジョンに潜ったんですよね?」


「そうですが?」


「…あなた本当に何者なんですか」


「いや、だから僕は雨宮裕太と言って探索者育成高校に通う普通の学生ですよ?それ以上でもそれ以下でもありません」


「…普通の学生、ね…」


また有村さんが遠い目になった。


「普通ってなんだろう…」


「おーい、大丈夫ですか?」


「はっ」


「…?」


よくぼんやりする人だなぁ。


見た目はしっかり者って感じなんだけど、割と抜けているところがあるのかもしれない。


「ええと…ゴブリンの魔石、アーチャー、ウィザード…オークの魔石もこんなに……あと、このでかいのがオーガキングの魔石

で……全部を合わせて今のレートだと…」


有村さんがカタカタとキーボードを操作して計算を換金額の計算を行っている。


やがて結果が出たようだった。


「魔石の換金額+イレギュラーモンスター討伐報酬を合わせて、合計1207万円ですね」


「い、一千二百万…?」


聞き違いか?


想定の二桁上の数字が聞こえてきたような気がしたんだが。


「あの、もう一度言ってもらえますか?」


「あなたの今日の探索における成果報酬は合計で1207万円です」


「…」


聞き違いじゃなかった。


いきなり富裕層の年収みたいな金額が手に入ってしまった。


マジか。


探索者ってこんなに儲かるのか…。


そりゃみんなこぞってなりたがるわけだ。


「あの、魔石の換金額だけでこの値段ですか?」


「いいえ。魔石の換金額だけだと907万円で

す。これにイレギュラーモンスター討伐報酬の三百万円が上乗せされています」


「イレギュラーモンスター討伐報酬…?」


聞いたことない討伐報酬だ。


首を傾げる僕に、有村さんが説明してくれる。


「ダンジョン内におけるイレギュラーによって発生したモンスターをイレギュラーモンスターといい、討伐者には特別な報酬が出されることが決まっているんです。イレギュラーモンスター討伐報酬は、モンスターのランクによって値段が決まっていて、Sランクなら三百万円ですね」


「おぉ…そんな仕組みが…!」


そんなことで三百万円も成果が上乗せされたのか。


むしろ僕はあの『なすりつけ』を行った四人組みの探索者に感謝するべきなのかもしれないな。


「イレギュラーモンスターは非常に危険ですからね。討伐者に報酬が払われるのは当然です」


「そうですか。ならありがたくいただきます」


「はい、では報酬はすべてライセンス口座に振り込んでおきましたので」


「わかりました」


ライセンス口座というのは探索者ライセンスが発行されるのと同時に自動的に作られる口座であり、探索者がダンジョン探索によってえた報酬は一度必ずこの口座に振り込まなければならないことになっている。


そうやって国が、国内の探索者たちの報酬などの記録も管理しているのだ。


「他に何かご入用はありますか?」


「いえ、大丈夫です。ありがとうございました。有村さん」


「いえ、雨宮さん。今日は私の独断で勝手な行動に出てしまい迷惑をおかけしてしまいました。誠に申し訳ございません」


「その件は大丈夫ですから」


「…あなたにイレギュラーモンスターをなすりつけたあの四人組に関してはご安心ください。必ず上層部に報告して然るべき罰を受けさせますから」


「あの四人組み…?ああ、あいつらか」


「あの四人組みはよくここのA58ダンジョンに出入りしている『紅の双剣』というAランクパーティーです。今回彼らがあなたに対して行った行為は重大な犯罪です。彼らの処分はこちらでいたしますのでご安心を」


「それじゃあ、よろしく頼みます」


別段僕は彼らに『なすりつけ』をやられても問題なかったわけだが、他の探索者だったらどうなっていたかわからない。


犯罪行為を行なった彼らはやはり裁かれるべきなんだろうな。


「じゃあ、僕はこれで」


「はい。またのお越しをお待ちしております」


僕は最後に有村さんに軽く会釈をして、ウキウキ気分で探索者センターを後にしたのだった。


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