第44話 A58ダンジョン攻略5
背後から突如として乱入してきて僕とオーガキングの間に割って入ったその人物…
それは、ここまでダンジョンの入り口からずっと僕をつけまわしていた気配の正体だった。
まさかこんなところで飛び出してくるとは思わなかった。
というかこの人って…
「あれ…?受付の人…?」
そう。
やたら要らぬことを言い募って僕を止めようとしてきたあの探索者センターの受付の人だった。
なんでこの人は僕をずっとつけまわしていたんだ?
このタイミングで乱入してきた目的は…?
はっ。
まさか僕の手柄を横取りするために…?
「逃げてください!!」
「…はい?」
「危険です!!このモンスターの名前はオーガキング。ランクはSです。あなたの手に負えるようなモンスターじゃない!!」
「いやいや、急にどうしたんですか。というかなんであなたがここにいるんですか?」
「今はそんなこといいですから!!早く逃げてください!!ここは私が引き受けます!」
「いや、それ僕のモンスター…」
「あなたには手に負えないと言っているでし
ょう!?Sランクモンスターですよバカなんですか!?」
『グォオオオオオ…!!!』
僕たちがそんなバカな問答をしている間に、オーガキングは僕たちに迫りつつあった。
「危ないですよ。どいてください。こいつは僕の獲物です」
「いいえどきません!!ここまでついてきたのに……あなたを簡単に死なせるわけには行かない!」
「だからなんなんですかあなた…なんで僕の探索の邪魔をするんだ…?というか本当危ないですよ」
オーガキングが受付嬢に迫りつつあった。
僕は受付嬢が怪我しないようにすぐさまオーガキングをスキルで迎撃しようとする。
だが…
スルッ…
「あれ…?」
オーガキングは僕の前に立つ受付嬢をスルーしてそのまま僕に突っ込んできた。
「あ,そうか。デコイスキルか」
「はっ!?しまった!?囮スキルの効果が…!?」
慌てたように受付嬢はそう言って、なんと次の瞬間、自分に対して囮スキルを発動した。
「デコイ!!」
『グォオ…?』
オーガキングが足を止めて、受付嬢の方を振り返る。
「いや何してんすか」
なんで自分にわざわざ標的を変更したのだろう。
やっぱり僕の獲物を横取りする気か?
「デコイ」
囮スキルなら僕だって使える。
『グォオ…?』
僕は囮スキルを自分に対して使ってオーガキングの標的を自分に再度変更させる。
「いやいや、何してるんですか!?死ぬ気ですか!?デコイ…!」
それを見た受付嬢はあろうことか、もう一度囮スキルを自分に対して使ってオーガキングの標的を自分にしようとする。
だが…
『グォオオオ…!!』
「どうして!?」
「ふふふ。どうやら僕の囮スキルの方が威力が強かったみたいですね」
今度は標的は変わらず、オーガキングは僕に向かって突進してきた。
受付嬢の囮スキルよりも僕の囮スキルの方が威力が上だったようだ。
良かった。
これで獲物を横取りされずに済む。
「だめぇええええ!!!逃げてぇええええ!!!!」
受付嬢は獲物を横取りされたのが本当に悔しかったのか、悲鳴をあげる。
『グォオオオオ…!』
「お前は僕の獲物だ。逃がさないよ」
僕はニヤリと笑い、オーガキングと戦闘状態に入った。
『グォオオオオオ…!!!』
「まずは動きを止めようか」
オーガキングはでかい上に動きも早い。
同じSランクでも、トロールというモンスターは、図体はでかいが動きが鈍いという弱点がある。
その点、オーガキングには弱点という弱点がない。
図体はデカく、攻撃の威力は高い。
しかし、速さも中型のモンスターの比べて見劣りしない。
むしろ早いぐらいだ。
ゆえに、全力で動かれたら少し厄介だ。
だから、まずはオーガキングの動きを止めることにしよう。
「『グラビティ』」
僕はオーガキングに対して重力スキルを発動した。
『グォオオ…ォオオオ!?』
ビキビキビキビキ…!
僕の重力を加速するスキルによりオーガキングが地面に膝をつく。
超重力のかかったダンジョンの地面がひび割れ、凹んだ。
「ふぇえええええええ!?!?」
受付嬢の人がそれを見て奇妙な悲鳴をあげている。
だが、今は構っていられない。
「スキル……『水球』」
次に僕が使ったのは水球スキルだ。
なかなかの威力の水の球がオーガキングに向かって飛んでいく。
バシャ…!
『グォ…?』
命中はした。
だが、オーガキングに対したダメージは入っていない。
だが、それでいい。
この水球はオーガキングにダメージを与える
ために撃ったのではない。
あくまで目的はオーガキングの全身を『水で濡らす』ことだ。
『グォ…グォオオオオオ…!!』
「へぇ、結構根性あるね。流石Sランクモンスター」
僕の超重力スキルを喰らいながらも、オーガキングがなんとか立ちあがろうとする。
スキルの重ねがけでもう一度膝をつかせてもいいが……トドメの準備は整ったしその必要はないな。
「これで終わりだ。スキル……『サンダー』」
バリバリバリ…!!!
使ったのは雷のスキル。
空中から突如として発生した稲妻が、全身ずぶ濡れで感電しやすくなったオーガキングを蹂躙する。
『グォオオオオオ…!!!!』
オーガキングが悲鳴を上げる。
僕のスキルの中でもなかなか高威力に分類されるスキル『サンダー』を食らったオーガキングは、ビクビクと何度か痙攣し、その後力尽きて地面に倒れ伏した。
ぷす、ぷす、と肉が焦げるような音がなり、オーガキングの図体から煙が舞い上がる。
「流石に死んだかな?」
僕はオーガキングの体に生死を確認するために軽く蹴りを入れる。
「嘘でしょ…」
近くでは一部始終を見ていた受付嬢が呆然としているがやっぱり今は構っていられない。
「お、死んだみたいだね」
やがて倒れたまま動かなくなっていたオーガキングの死体が、少しずつダンジョンの地面に吸収されていった。
ものの1分ほどで、死体は全てダンジョンの地面に飲み込まれ、後にはサッカーボールほどの大きな魔石が残された。
「でっか…!おっも…!」
僕はその巨大な魔石を持ち上げて、亜空間に収納する。
あれだけの大きさの魔石だ。
かなりの値段になることだろう。
「収穫は上々ってところかな」
ダンジョンに潜ってから結構な時間が経過した。
Sランクも討伐したし今日のところはこのぐらいにするかな。
僕は今日の成果に満足して、元きた道を戻ろうとする。
そして、ようやく今まで放置していた受付嬢の存在を思い出した。
「えっと……結局なんでついてきたんですか?」
僕は今更ながら、受付嬢が僕を尾行してきた理由を尋ねるのだった。
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