第40話 A58ダンジョン攻略
「なんだったんだ?あの受付嬢」
探索者センターでダンジョンに潜る前の手続きを済ませた僕は、やたらとお節介を焼いてきた受付嬢に首を傾げる。
基本的に探索者がダンジョンへと潜る行為は国から推奨されている。
公務員である探索者センターの職員が、探索者のダンジョン探索を阻害しようとするなんて話は聞いたことがない。
一体何が目的だったんだろうか。
僕がAランクダンジョンへ無謀な探索を試みて死ぬのが見ていられなくて、わざわざ職務を超えてあんなに言い募ってきたのだろうか。
だとしたらとんでもないお人好しだな。
でも僕にとっては迷惑以外の何者でもない。
どちらかというと、探索者がダンジョンで死んでもそれは自己責任だと割り切って仕事をしている職員の方が僕にとってはありがたいな。
「まぁ、そんなことはいい」
僕は余計な思考を振り払って、いよいよA58ダンジョンの入り口へと立った。
全てのダンジョンは、地上へモンスターが溢れ出さないようにその入り口を厳重に金属製の扉で封鎖されている。
ここを通れるのは、探索者センターで許可をもらった探索者ライセンスを所持する探索者のみだ。
「いよいよだな」
緊張しないと言ったら嘘になる。
なんだかんだ地上のいわゆる『普通のダンジョン』に潜るのはこれが初めてだからな。
異空間ダンジョンとは随分勝手が違うかもしれない。
あまり油断はしないで慎重に行こうと思う。
ピッ…
センサーに探索者ライセンスをかざすと、ダンジョンの扉がガコンガコンと開いていった。
「行くか」
僕は覚悟を決めて、扉のその先の暗闇に足を踏み出していった。
「随分広いな」
A58ダンジョンの通路は思ったよりも広かった。
異空間ダンジョンの通路よりもかなりスペースがある。
周りに他の探索者の姿は見当たらなかった。
「ライト」
僕は照明スキルを使い、前方を照らしながら慎重に進んでいく。
『グゲゲ…!』
「お?来たな?」
聞き慣れた鳴き声が聞こえてきた。
僕は足を止めて前方を見据える。
『グゲ…!グゲゲ…!』
果たして暗闇の向こうから姿を表したのは、もうすっかり見慣れた雑魚モンスター、ゴブリンだった。
『グゲゲ…!ギィギィ…!』
異空間ダンジョンに出現するゴブリンと全く同じような見た目。
醜悪な外見、耳障りな鳴き声まで本当にそっくりだ。
おそらく強さも大して変わらないのだろう。
「…!」
僕は一瞬でゴブリンへと肉薄し、回し蹴りを放つ。
『ゲ……
ゴブリンの体は僕の蹴りの威力に耐えれるはずもなく、弾けるような音と主に破裂しげぐちゃぐちゃになった。
ゴブリンは断末魔の悲鳴をあげる間も無く絶命し、臓物がびちゃびちゃとダンジョンの地面に転がった。
「うん。普通のゴブリンだね」
やはりゴブリンはゴブリンだった。
異空間ダンジョンのゴブリンと何も変わらない。
やはり異空間ダンジョンと普通の地上のダンジョンで、モンスターの強さに違いはなさそうだ。
いや、結論づけるのはまだ早い気がするけど。
「さてさて……魔石はどこかな…?
お…!?」
僕が肉塊になったゴブリンの死体の中から異空間ダンジョンのモンスターはドロップしない魔石を探そうとすると、突然驚くべき現象が起こった。
ゴブリンの死体がダンジョンの地面に吸収されるように沈んでいったのだ。
「すごいな…初めて見た」
地上のダンジョンはモンスターの死体を吸収する。
この事実を、僕は知識としては知っていた。
けれど本当に、この目で見たのは初めてだった。
異空間ダンジョンの場合、モンスターの死体は消えないし、魔石もドロップされないからね。
「お、これが魔石かな?」
死体は飲み込まれていったが、どうやら魔石は残るようだ。
僕は地面に落ちている紫色の小さな石を拾い上げた。
これがダンジョンがもたらす重要な資源、魔石だ。
これだけ小さいサイズだと大したお金にはならないけど…
「記念にとっておこう」
この魔石は僕が手に入れた第一号として記念に売らずにとっておくことにしよう。
「さて、どんどん行こう」
僕は魔石を収納のスキルで亜空間へ収納し、さらに奥へと足を進めるのだった。
〜あとがき〜
現在新作を公開、連載しています。
無人島でクラス追放された件〜昔蓄えたサバイバル知識で一人でも余裕で生き延びます〜え?毒キノコが見分けられない?罠が作れない?知らねーよ自分たちでなんとかしろ〜
https://kakuyomu.jp/works/16817330650479419653
ぜひこちらの方もよろしくお願います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます