第34話 チーム、ダンジョン攻略ノルマ


「今日は有馬勝太は体調が悪くて欠席するらしい。誰か放課後に様子でも見にいってやれ」


翌日、有馬は授業を休んだ。


「流石にやりすぎたかな…」


僕は流石に『わからせ』すぎたと反省する。


自分から仕掛けた勝負でコテンパンに負けて、最後はお漏らしまでさせられるという醜態に、有馬の精神は耐えられなかったらしい。


まぁ、あいつは神経図太いやつだし明日になったら流石に授業に顔を出すだろう。


「それじゃあ、今日から本格的に授業を始めていくぞ」


初日のオリエンテーションを終えて、今日から探索者育成高校の通常授業が本格的に始まる。


担任の岡部が「覚悟はいいか」というようにクラス中を見渡した。


「ではまず初めに毎年恒例のチーム決めを行いたいと思う」


「ん?チーム決め?」


「どういうことだ?」


首を傾げる生徒たちに岡部教諭が詳しい説明をする。


「お前たちは今日から三年間、この日本最高峰の探索者育成教育機関、探索者育成高校で学ぶことになるわけだが、ただのほほんと三年間を過ごすことは許されない。お前たちには数ヶ月ごとにダンジョン攻略のノルマが課されることになっている」


「だ、ダンジョン攻略のノルマ…?」


「どういうことだよ」


疑問の声を上げる生徒に岡部教諭がわかりやすく説明する。


それによると僕たち探索者育成高校に通う生徒には、在学中、全員霊学なく、ダンジョン攻略のノルマが課されることになる。


攻略ノルマとはつまり、規定日時までに指定されたダンジョンを攻略しなければならないということだ。


もしノルマを達成できなければペナルティが待っており、そのペナルティを何度も喰らう

と退学になることもあるらしい。


「毎年退学者が少なくとも二十名は出ている。だから皆心してダンジョン攻略に挑んでほしい。だが心配するな。いきなりSランクダンジョンに潜れなんて鬼畜なことは言わない。そこは安心してくれていいぞ」


岡部教諭の説明によれば、一年生が攻略しなければならないダンジョンのランクはCか、せいぜいB止まりらしい。


しかも一人で攻略しなければいけないわけではなく、三人一組のチームで攻略すればいいという話だった。


「そういうわけだから、今日はダンジョン攻略ノルマのためのチームを決めるぞ。三人一組でチームを組むんだ。誰でもいい。各々話し合って決めろ。チームはノルマ達成後に解消されるが、一度申請すると、ダンジョン攻略完了までは変更できないからな」


そういうわけで、最初の授業の残りの時間は、チーム決めの時間となった。


「ど、どうする?」


「誰と組む…?」


「つ、強いやつと組まないと…」


皆退学がかかっているため、かなり必死だ。


席を立って、なるべくスキルランクの高いものとチームを組もうとしている。


「なぁ、雨宮。よかったら俺と…」


「ねぇ、雨宮くん。もしよければ私とチームに…」


昨日の僕と有馬の勝負を見た生徒たちだろうか。


Gランクの僕にも声をかける生徒がちらほらいた。


だが、僕はそんな彼らの誘いを断る。


「悪いね。組む人はもう決めてあるんだ」


そういった僕は、教室をぐるりと見渡した。


すると、どうやら『他の二人』も、僕と同じ考えだったらしく、教室の端から二人してこちらに手招きしてくる。


「やあ、二人とも」


「やっぱりこの三人よね」


「よかった!二人とも同じ考えだったんだね…!私嬉しいよ!」


そこにいたのは早乙女と黒崎だ。


三人一組のチームと決めた時点でこの二人が僕の頭の中に思い浮かんだのだが、どうやらそれはこの二人も同じだったようだ。


「これからよろしく」


「ええ、よろしくお願いするわ」


「よろしくね!雨宮くん!黒崎さん!」


そうして僕は、黒崎と早乙女とチームを組んだのだった。

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