第22話 自己紹介2
「ぎゃははははは!!!」
「冗談だろ!?」
「こいつ馬鹿だ…!絶対に馬鹿だ!?」
「聞き違いか!?Gランク如きが世界一の探索者!?」
「身の程をわきまえてないにも程があるだろ…!」
大爆笑するクラスメイトたち。
Gランク如きが何を言っているんだ。
世界一の冒険者?寝言は寝て言え。
あちこちから失笑混じりのそんな野次も聞こえてくる。
「みんな随分スキルのランクを重視するんだなぁ」
彼らの反応を見て僕は少し不思議に思った。
実技試験の時といい今といいどうもこの学校の生徒は、スキルランクを重視しすぎるきらいがある。
結局のところ探索者の実力なんて本人の努力次第だと思うんだけど。
まぁ、よりランクの高い優秀なスキルランクをもらったほうがスタートは有利なことは認める。
けれど最終的にはやっぱり本人の意思や努力の方が重要だと思うんだけどな。
僕がおかしいのか?
「おい、静かしろ…今はまだ雨宮の自己紹介中だぞ……ぶっ」
いやあんたも笑ってんじゃん。
僕は生徒に注意しながら自分でもたまらず吹き出した岡部教諭に内心ため息を吐いた。
どうやら僕にはこれから波乱に満ちた学校生活が待っていそうだ。
「よ、よし…もういいぞ雨宮。素晴らしい自己紹介だった…ぷふっ…つ、次だ次…!」
岡部が必死に笑いを堪えながら次の生徒に自己紹介を頷く。
「はぁ…やれやれ…」
未だあちこちでクスクスと笑い声が聞こえる中、僕はため息を吐きながら腰を下ろした。
「黒崎美久です」
ん…?
後ろの席から聞き覚えのある声が聞こえた。
それと同時に僕の自己紹介のせいで騒がしくなっていた教室が一気に静まり返る。
「もしかして…」
僕はチラリと後ろを振り返る。
するとちょうど、背後に立っていたその見覚えのある少女と目があった。
にっこりと少女の口元に笑みが浮かぶ。
「スキルランクはS。好きなことは読書です」
思い出すのは数週間前。
実技試験当日、試験会場で僕をただ一人庇ったあの少女。
確か別れ際「同じクラスになるかも」みたいなことを言われた気がしたが、まさか本当にそうなるとは。
「将来の夢は探索者の才能を磨き社会の役に立つこと、かしらね」
澄んだ声で淡々と自己紹介をしていく黒崎。
クラスメイトたちは黒崎の容姿の淡麗さに圧倒されているのか、茶々を一切入れることなくぼんやりとした表情で見守っている。
「後は、そうね……私にはどうしても許せないことが一つあって…」
名前、スキルランク、将来の目標をつらつらと紹介していった黒崎は最後に、どうしても許せないもの、というあまり一般的ではないチョイスで自己紹介を締め括る。
「それは……スキルランクなどの上辺だけで人を決めつけて当人の努力を一切評価しない人たち、かしら」
「「「「…」」」」
シーンと静まり返る教室。
たった今生まれた静寂は、先ほどまでのそれとは全く別の意味を含んでいた。
僕はもう一度振り返って黒崎を見る。
黒崎が僕と目を合わせ、妖艶な笑みを浮かべた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます