第16話 実技試験5


オーガを倒した僕は、バトルルームを出る。


元の試験会場へと戻ると、多くの視線がこちらに向けられていることに気がついた。


「な、何者なんだあいつ…」


「オーガと倒すどころか……圧倒していたぞ…」


「みたかあいつの戦い…オーガは触れることすら出来なかったぞ…」


「何者なんだ…?本当にただの受験生か…?」


「きっとAランク以上のユニークスキル持ちなんだろうな」


受験生たちはバトルルームから出てきた僕を畏怖のこもった視線で見つめる。


僕が歩くと、まるでモーセが海を割ったみたいにして、受験生たちがゾロゾロと引き下がり、道を開けた。


「ちょっとやりすぎたかな…?」


試験官に僕の戦闘技術を見せる必要があったため、手加減ができなかった。


だが、そのことで少々他の受験生たちを怖がらせてしまったようだ。


もう少し苦戦した感じを出すべきだったか…

いや、手を抜く必要はないよな。


僕は確実に探索者育成高校に受からなくてはならないのだから。


「こ、この嘘つき野郎…!」


「…?」


「俺たちを騙しやがって…!」


「何がGランクスキルだ…!この嘘つきめ…!」


ふとそんな罵倒が聞こえてきた。


「ああ、君たちか」


見ればそこには、オーガとの戦闘前、僕のことをスキルランクで馬鹿にしていた連中がいた。


騙された、嘘つき。


そう僕をなじってくる。


おそらく僕の戦いを見て、僕がGランクスキルなのは嘘だと思ったのだろう。


「何かな?文句でもある?」


「ああ、あるさ…!お前なんで嘘ついたんだよ!?」


「どこがGランクスキルだ!?嘘つきやがって…!」


「お前本当はAランクかもしくはSランクのスキルだろ…!!俺たちを騙したな!?」


「わざと低いスキルを言って、内心では俺たちのこと馬鹿にしてたんだろ…!」


「いいや、僕は一切の嘘はついてないよ?僕のスキルランクはGだ」


「嘘つけ」


「そんなわけあるか」


「嘘じゃないよ。受験票を見るかい?」


僕は彼らに自分の受験票を見せた。


そこには僕の名前と受験番号、そしてユニークスキルランクが記載されている。


受験生たちは、僕のスキルランクが本当にGランクであることを見て目を見開いた。


「し、信じられねぇ…」


「本当にGランク…?」


「じゃあ、どうやってオーガを…?」


「強くなるのにスキルランクなんて関係ない。努力あるのみだ。そうだろう?」


僕はそう言ったが、受験生たちは信じていないようだった。


何か僕が彼らに知らない方法で受験を突破した。


そのことを疑っているような表情だ。


「分かったぞ…!こいつ、きっと強い探索者にレベリングしてもらったんだ…!!」


突然一人がそんなことを言い出した。


「はぁ?」


僕が何言ってんだという表情を向けるが、そいつは自分勝手な憶測をベラベラと喋る。


「きっとこいつは実家が金持ちなんだ…!それで強い探索者を雇ってモンスターを殺させてもらってレベリングをしたんだ…!それ以外に考えられない…!」


「いやいや」


僕が的外れな意見を否定しようとするが、他の生徒は納得したような表情になっていた。


「なるほどな」


「卑怯者め」


「お前そんな汚い手段を使ったのかよ」


受験生たちは僕を卑怯者と罵り、睨んでくる。


「あのなぁ…」


僕は完全に呆れ果ててしまった。


もちろんだが僕はレベリングなんてしてもらっていない。


僕の力は僕の努力の結晶だ。


それを否定され、少しイラッときた。


反論してやろうと思ったが、受験生たちは大方僕がレベリングしたという結論で納得してしまったようだ。


この分だと説得は難しい。


「まぁ、君たちはそう思っておくといいさ」


僕は面倒臭くなって勘違いした彼らを放置しようと決めたその時だった。


「いい加減にしなさい。みっともないわよ」


試験会場にそんな声が響いた。

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